MADE IN TAMRON 人と技でつなぐタムロンのものづくり
トップ > タムロンのものづくり > ものづくりの現場を訪ねる > 第1回 MADE IN TAMRON
- 第1回
MADE IN TAMRON - 第2回
タムロンレンズが大切にしていること - 第3回
描写のフィロソフィー - 第4回
交換レンズができるまでを俯瞰する - 第5回
交換レンズのもう1つの重要パーツ - 第6回
光学ガラス材から
写真レンズに仕上げる - 第7回
中国・仏山タムロン工場について - 第8回
どこで作っても、同じ品質、
同じ性能のレンズをめざす - 第9回
工場で交換レンズを作っている人たち - 第10回
デジタルカメラにとって良いレンズとは
田中 希美男たなか きみお
多摩美術大学・多摩芸術学園写真科を卒業後、フリーランスフォトグラファーに。おもにクルマの撮影を専門とするが、人物、風景、スナップなど撮影分野は多岐に渡る。おもな出版書籍は「デジタル一眼上達講座」、「デジタル一眼 "交換レンズ" 入門」(ともにアスキー新書)、「デジタル一眼レフ・写真の撮り方」(技術評論社)、「名車交遊録」(原書房) 、「名車探求」(立風書房)など。写真展は多数開催。現在、カメラやレンズ、写真関連の雑感を写真ブログ『Photo of the Day』や、twitter『@thisistanaka』で情報を発信中。
ホームページは
『http://www.thisistanaka.com/』
MADE IN TAMRON
タムロンの交換レンズには、「MADE IN JAPAN」、「MADE IN CHINA」または「MADE IN VIETNAM」と刻印されたレンズがある。それぞれのレンズを組み立て、完成させ、出荷している国の名、生産地を示している。
つまりタムロンのレンズは、日本、中国、ベトナムの3カ所にレンズ工場があって、そこで組み立てて製品にして出荷している。
日本国内のタムロンのおもな工場は、青森県内に3カ所ある(埼玉県さいたま本社には金型工場が併設されている)。青森3工場はいずれも歴史のある工場だ。レンズ研磨を中心におこなっている浪岡工場、プラスチック部品の成形製造をおこなっている大鰐工場、そして交換レンズの最終組立工程のある弘前工場である。
その中の弘前工場では、浪岡工場や大鰐工場から集められたレンズや部品を組み立てて、完成品にして出荷している。それが「MADE IN JAPAN」のレンズだ。
いっぽう、「MADE IN CHINA」の刻印のあるレンズは、中国広東省の仏山(ふっさん)市にあるタムロン工場で製造、出荷されたものである。こちらの工場では一カ所で、レンズ研磨、プラスチック成形、AF(オートフォーカス)/VC(手ブレ補正)のユニット作り、そして交換レンズの最終組立まで一貫生産をおこなっている。
「MADE IN VIETNAM」は、ベトナム北部の首都ハノイにあるタムロン工場で作られたレンズだ。
ところで、やや一般的な傾向ではあるが、レンズの性能や品質が生産地、生産国だけで判断されてしまいがちだ。カメラやレンズなど精密機器の場合、とくにその傾向が強いように思う。「MADE IN JAPAN(日本製)」や「MADE IN GERMANY(ドイツ製)」というだけで、高性能で信頼できる製品であると信じている人たちも少なくない。確かに、一部のメーカーの一部の製品については、それは事実だろう。
しかし、そのいっぽうで、たとえば「MADE IN CHINA(中国製)」というだけで、ひとくくりに一段低く見下してしまうということがある。
それには大きな誤解があるのではないだろうか。
こと、タムロンの交換レンズにかんしては、どの国、どの場所であろうが製造地によって品質や性能が変わることは決してない。タムロン自身が、いつも徹底して心がけていることだという。
企画も設計もすべて埼玉県さいたま市にある本社でおこない、製品の品質管理の「総元締め」でもある。「品質も性能も、どこで生産しても同じにする。それがタムロンのやり方です」とそんな話を私は多くのタムロンの人たちから何度も聞いたことがある。
「タムロンのすべてのレンズは、どこで作っても同じ品質の製品だという意味で、『 MADE IN TAMRON 』という気持ちを込めています」ともいう。
タムロンという名前がつくレンズは、どこの工場で製造し組み立ててもすべて、さいたま本社が定めた品質と性能を確保するように徹底しているというのだ。
だから『 MADE IN TAMRON 』。
そう私も思う。いままで実際にたくさんのタムロンレンズを使ってきたが、まったくその通りだ。中国産レンズだとか日本産レンズだとか、その違いを考えたこともないし、感じたこともない。
ある日、タムロンの担当者とそんな話をしていたとき、「じつはそのことですが、中国のタムロン工場の人たちが、いつも悔しがっていましてね…」というのだ。中国の工場の人たちは自信と誇りを持ってレンズを作っているんですよ、とも。
「品質と性能にこだわり、どれだけ注意を払ってレンズを作っているのか、その様子をぜひ中国に来て、工場を見て欲しい」と言っている。すべてをありのままに見せます、というのだ。「見に行きませんか、中国のタムロン工場に」と、私が誘いを受けたのが今年の初夏。
そりゃあもちろん、私としてはぜひ見てみたい。
どんな設備の中で、どんな人たちが、どんな手順で交換レンズを作っているのか。どのような品質管理をしているのか。そのへんにとても興味がある。
そもそも、精密機器を作っている会社のどこもそうだが、工場の内部はあまり見せたがらない。製造過程(ライン)にはノウハウが詰まっているし機密事項も多いからだ。おそらく制限付きの見学になると思うが、それでも見てみたい。
じつはタムロンの青森工場は、雑誌の取材などで数回、見学させてもらったことがあるが、タムロン海外工場はまだ行ったことがない(私は他メーカーの国内、海外のカメラやレンズ工場は何度か見学に行ったことはある、制限付きが多かったけど)。
28-300mm F/3.5-6.3 Di VC PZD (Model A010)、絞り優先オート(F/8、1/250秒)、マイナス0.3EV露出補正、ISO100。
28-300mm F/3.5-6.3 Di VC PZD (Model A010)、絞り優先オート(F/8、1/250秒)、マイナス0.3EV露出補正、ISO100。
というわけで今年2016年の夏真っ盛りに、中国広東省の仏山にあるタムロン工場(騰龍光学)を見学することになった。むろん、ただの物見遊山で工場見学に行ったわけではない。私なりのテーマを持っていた。
それは、「タムロンレンズの品質と性能、そして技術力」についてである。
レンズ作りは、ごくごく簡単に言えば、企画から始まり、光学設計、鏡枠設計や電子部品の設計をして工場で生産が始まる。これらの過程では、品質のチェック、部品の精度管理、組み立て時の調整、また検査、というふうに多くの工程を経て1本のレンズに仕上がる。
そこで、せっかく工場見学といういい機会を与えてもらったので、この際、タムロンレンズがどのように作られていくのか、順々にその道筋を「品質、性能、技術力」をテーマにしながらたどりつつ、最終的に1本の交換レンズとして完成させる工場見学のレポートをすることにした。
工場見学の話にいたるまで少し遠回りすることになるが、途中、タムロンが考える交換レンズとはどんなものか、どんなことを大切にしてレンズを設計し生産しているのか、そんな話題にも触れていきたい。
次回は、タムロンレンズの企画から設計、生産までの大筋をまずは俯瞰的に眺めてみることにします。この連載ブログ、次回も、ぜひお愉しみください。
田中 希美男たなか きみお
多摩美術大学・多摩芸術学園写真科を卒業後、フリーランスフォトグラファーに。おもにクルマの撮影を専門とするが、人物、風景、スナップなど撮影分野は多岐に渡る。おもな出版書籍は「デジタル一眼上達講座」、「デジタル一眼 "交換レンズ" 入門」(ともにアスキー新書)、「デジタル一眼レフ・写真の撮り方」(技術評論社)、「名車交遊録」(原書房) 、「名車探求」(立風書房)など。写真展は多数開催。現在、カメラやレンズ、写真関連の雑感を写真ブログ『Photo of the Day』や、twitter『@thisistanaka』で情報を発信中。
ホームページは
『http://www.thisistanaka.com/』