2022.06.22
鉄道写真の世界へようこそ!楽しみながら撮る、鉄道撮影のコツをご紹介
構図に続いて、撮影テクニックとしてご紹介するのはシャッタースピードと絞り値です。鉄道は動体撮影の分野ですから、高速でのシャッタースピードが基本となります。特にデジタルカメラ高画素時代の現在は、さらにもう一段早いシャッタースピードが必要です。被写体をブレないように写すには、1/800秒~1/2000秒の領域で撮影しましょう。新幹線ともなると、1/2000秒~1/4000秒は欲しいところです。
鉄道写真で基本とされる撮影設定として、明るい昼間ならば、絞りはF5.6~F8の2段から3段絞った設定がおすすめです。鉄道写真では記録が重視されるため、被写界深度は深く、描写力は高い方が好まれます。最近の機材は高感度でも画質の低下が少ないので、ISO感度は積極的に高感度に設定して撮影しましょう。一方で「自分なりの鉄道写真を撮ってみたい!」と考える方には、あえて遅いシャッタースピードや絞りを開放値にすることをオススメします。特に、遅い領域のシャッタースピードで表現できる「流し撮り」は、列車のスピード感を表現できます。初めて挑む場合は、シャッタースピードを1/60秒~1/250秒に設定して、列車の動きに合わせて機材を振りましょう。この設定領域での撮影が成功したら、さらに遅いシャッタースピードに挑んでみましょう。タムロンレンズには流し撮りに便利な機能が搭載されているレンズもあります。
また、絞りを開放にすると、レンズ特有のボケ味が生まれます。これは肉眼では感じられないようなロマンチックな写真に仕上がります。特に夜景やお花をボケに利用すると主題が引き立ちます。自分が目指したい世界観を優先して、撮影設定を選びましょう。
鉄道写真では望遠レンズが大活躍します。標準ズームと望遠レンズの二本があれば、ひと通りは撮影できます。望遠レンズなら、300mm領域をカバーするものがオススメです。個性的な写真が撮りたいならば、さらに超望遠レンズや超広角レンズを視野に入れるのも良いでしょう。良いレンズを持ち歩くと、良い写真が撮りたくなるものです。自分に合った焦点距離やサイズ感で優秀なレンズを選びましょう。
創意工夫としては、他人と撮影時間をずらすことも上達への近道です。有名な撮影地であっても、同じ場所からの朝焼けや夜景を見たことがない人は意外に多いのです。このようなささやかな違いにもシャッターチャンスは潜んでいます。良い写真は足で稼ぐことが重要です。全国各地に絶景がありますが、季節を通して、魅力的な風景を自分なりの視点で探し出しましょう。自分の写真を誰かに見せて、あっと言わせるようになれば上出来です。だからと言ってSNSの「いいね」だけが全てではありません。自分の世界を追求すること、つまりオリジナリティーが大切です。そのためにはただ漫然と撮るだけではなく、写真展に足を運んで様々な作品を見たり、コンテストに応募したりする事も良い刺激になります。
さっそく鉄道写真を始めよう、という方に、少しだけマナーの話をします。ジャンルを問わず、良い写真を撮るコツは被写体への正しい理解と愛情です。近ごろ、鉄道写真のマナーがニュースとなる機会が増えました。よほど悪質な場合を除き、実はマナーを知らずに事故が起きてしまったというケースも多いのです。簡単ではありますが、安全に撮影するお約束事をまとめました。
・線路から十分に離れて撮影する。
・撮影地は譲り合いをする。
・「ちょっとくらい大丈夫」という誤った考えで行動しない。(これが鉄道事故を招くことになります。)
この3つを遵守して撮影を楽しんでください。列車が来ない時間帯であっても、不用意に線路に近づかないよう気をつけましょう。鉄道事故はケガを伴うことも十分にありえます。マナーも立派な撮影テクニックのひとつです。
今年は日本の鉄道開業150周年の記念すべき年です。北海道から沖縄まで、各地で今日も元気に列車は走っています。被写体も蒸気機関車からローカル線、時代の最先端をゆくリニアモーターカーまで多種多様です。列車を熱心に追いかけるのも良いですが、列車の来ない時間に美味しいものを食べたり、観光地へ寄り道をしたり・・・そのような旅の楽しみが味わえるのも鉄道撮影の醍醐味です。私の場合は撮影終わりの温泉巡りも楽しみの一つです。今回は本格的な鉄道写真のご紹介でしたが、列車に乗っての鉄道スナップ撮影も最高です。ローカル線の駅でのんびりと過ごす時間も楽しいものです。このように鉄道写真の楽しみ方は無限にあります。ご自身の好みに合った、列車や風景を求めて撮影に出かけましょう。きっとあなただけにしか撮れない傑作が生まれるはずです。この記事を読んで、一人でも多くの方に鉄道撮影の魅力を感じていただければ幸いです。
Endo Nobemaro(Masato Endo) 煙道 伸麻呂(遠藤 真人)
日本大学芸術学部写真学科卒業、日本写真学会 正会員 NPS会員、第3回タムロン鉄道風景Instagramコンテスト2021 審査員、EIZO ColorEdgeAmbassador。鉄道会社の公式撮影のみならず、行政や民間団体の講師の他、写真コンテストの審査、機材レビューの執筆など多岐にわたり活動する。蒸機の美姿を追い求めたライフワーク「煙道」は根強いファンが多い。軽快な話術とウィットに富んだ表現が魅力。写真集「いすみ鉄道 キハ52 125 写真集 Isumi Pride Vol.1」をクラウドファンディングで出版。WEB3.0時代を見据えた写真系NFTへも取り組む。
記事で紹介された製品
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70-180mm F/2.8 Di III VXD a056(Model )
70-180mm F/2.8 Di III VXD (Model A056)は、ミラーレス専用設計の大口径望遠ズームレンズ。その最大の特長は、開放F2.8通しの高性能レンズでありながら、フィルター径Φ67mm、最大径Φ81mm、長さ149mm(70mm時)、重量810gという世界最小・最軽量ボディです。
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150-500mm F/5-6.7 Di III VC VXD a057(Model )
150-500mm F/5-6.7 Di III VC VXD (Model A057)は、望遠側の焦点距離500mmを確保しながら、手持ち撮影も可能な小型化を実現。高画質な描写性能はそのままに、超望遠500mmの世界を手軽にお楽しみいただけます。追従性に優れた高速・高精度AFと、手ブレ補正機構VCの搭載により、超望遠域での手持ち撮影をサポートします。