2024.11.27
写真家 岡嶋 和幸氏がタムロン11-20mm F2.8 (Model B060)キヤノンRFマウント用で撮る、ノルウェーの旅
写真家 岡嶋 和幸氏がタムロン11-20mm F2.8 (Model B060)キヤノンRFマウント用で撮る、ノルウェーの旅

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タムロン初となる「キヤノンRFマウント」用のレンズがいよいよ登場です。その第1弾であるAPS-Cサイズのミラーレスカメラ対応のタムロン11-20mm F/2.8 Di III-A RXD (Model B060)を手に、5年半ぶりの海外旅行です。残暑が厳しい日本から逃げるように向かったのは秋のノルウェー。大口径の超広角ズームレンズで、その雄大な景色をダイナミックに捉えてみたいと思いました。
ノルウェーを訪れるのは2回目。前回は首都オスロに次ぐ第2の都市・ベルゲンを拠点にフィヨルド観光を楽しみました。そのときに訪れたネーロイ・フィヨルドとともに、ユネスコの世界遺産に登録されたガイランゲル・フィヨルドを今回は目指します。沿岸の島にある港町・オーレスンから旅がスタートです。
一枚目の写真 焦点距離:20mm 絞り:F4.5 シャッタースピード:1/200秒 ISO感度:100 使用カメラ:CANON EOS R7
フィヨルド沿いの道を走行していると、放牧されている羊の群れが目に飛び込んできました。車を止めて近づくと、こちらの動きを察知したのか、すでに移動を始めていました。朝の光が印象的なシーンで、その様子を肉眼で見ているようなリアルな仕上がりです。露出判断が難しい条件でしたが、目の前に広がる光景を素直に写し撮ることができました。
オーレスンの観光資源でもある美しい街並み。超広角ズームレンズは通りを囲む建物の様子を1枚の写真に収めたいときに便利です。パースペクティブを生かした、奥行きのある表現に最適です。このクリアな描写も11-20mm F2.8の魅力といえるでしょう。肉眼での印象をそのままに、透明感のある光を自然に捉えた仕上がりに大満足です。
オーレスンの一番の観光名所であるアクスラ山。標高は約400mで、展望台から街並みや遠くの島々を一望できます。418段ある階段を登るわけですが、11-20mm F2.8は小型軽量なので助かりました。美しく広がるその景色を、うっかり開放で撮ってしまった1枚ですが、そのあとF8で撮った写真と見比べても描写の違いはほとんどありませんでした。
フィヨルドに面する小さな町でスナップ撮影を満喫。この日は快晴で抜けるような青空、草木の緑も生き生きしていて色彩豊かです。広がりを表現できる超広角ズームレンズは、コントラストを生かしたこのような画作りをしたいときにとても重宝します。画面の隅々までシャープな描写で、力強い感じに切り取ることができました。
陰影が強くなる日も、日陰に入ると柔らかな光に包まれます。コントラストや彩度が控えめになる撮影条件ですが、眠くなったり濁ったりせず、立体的で透明感のある仕上がり。ピントを合わせた花はシャープ過ぎず優しい描写で、背景のボケも滑らかです。日本の光とはどこか違う雰囲気なのですが、その様子を余すことなく写し込んでいます。
旅行中に外食することはほとんどありませんが、スーパーマーケットがお休みだったので、散策の途中にレストランへ。ノルウェーだからやっぱりサーモン?11-20mm F2.8は最短撮影距離が短いので、料理にも思いっきり接近できておいしさを逃しません。スマートフォンと撮り比べてみましたが、こちらのほうがシズル感が伝わりやすい印象です。
眼下に広がる大パノラマを写真に収めたかったのですが、標高1500mの山々に挟まれたフィヨルドの絶景を目にすることはできませんでした。それでも眠くフラットな描写にはならず、どんよりした天気の曖昧な光をしっかり捉え、必要十分なコントラストでシャープな画質を実現しています。画面を構成する要素が同化せず、奥行きが感じられる仕上がりです。
車とともにフェリーに乗船し、ガイランゲル・フィヨルドをクルージング。「七姉妹」と呼ばれるこの滝は見どころのひとつで、低く垂れこめた雲により太陽の光がかなり弱まっていましたが、氷河によって削られた断崖のディテールが驚くほど明瞭です。船上で感じた迫力がダイレクトに伝わってくる描写です。
氷河が削った山や湖が広がる景勝地。その壮大なスケールの景色を、超広角レンズのパースペクティブを生かして大胆に切り取りました。レンズ補正機能も効果的に働き、満足度の高い描写です。画面全域で優れた解像性能が得られ、奥行きが強調されるなど臨場感あふれる仕上がりです。
訪れた9月中旬は肌寒く、行く先々で秋色の風景が目を楽しませてくれます。湖畔のこのシーンでは、斜め後方からの光が色付いた樹木を浮かび上がらせてくれました。フレアやゴーストの発生が心配な光線状態だったのですが、11-20mm F2.8の優れた光学性能に助けられてクリアかつ鮮明な写りを実現しています。
ハイキングの途中に出合った桟橋。現在は使われていないようですが存在感があります。湖を眺めるのに絶好のポイントで、画作りするうえでも良いアクセントになります。11-20mm F2.8の超広角は、目の前に広がるこの光景をありのままに写し撮るのに最適で、旅を締めくくる印象的な1枚になりました。
超広角ズームレンズで、しかもF2.8通しの大口径なのに軽くて小さいのは大きな魅力です。今回は11-20mm F2.8だけで旅に出ましたが、ほかのレンズと組み合わせても大きな負担にならないでしょう。車を運転しているとき以外はEOS R7に装着して首から提げていましたが、一日中持ち歩いてもストレスフリーで、山に登ったときも疲労は少なかったです。悪天候にも強く軽快に動けるため、シャッターチャンスが増えるでしょう。スタイリッシュなデザインで、キヤノンのAPS-Cサイズのミラーレスカメラとのバランスも良いように感じます。ズームリングやピントリングのハンドリングは良好で、AFは高速かつ高精度でスナップ撮影にも柔軟に対応できます。どの焦点距離、どの絞りを選んでも安定した描写が望めるため、そのぶん画作りに集中できるなど、11-20mm F2.8とのノルウェーの旅はとても充実したものになりました。
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Kazuyuki Okajima 岡嶋和幸
福岡県福岡市生まれ。東京写真専門学校卒業。スタジオアシスタント、写真家助手を経てフリーランスとなる。世界を旅して詩情豊かな作品を発表するほか、セミナー講師やフォトコンテスト審査員など活動の範囲は多岐にわたる。書籍『私と写真 デジタル時代の作品制作論』、写真集『ディングル』『風と土』のほか著書多数。写真展も数多く開催している。月刊誌『デジタルカメラマガジン』『フォトコン』、情報サイト『デジカメ Watch』で連載中。キヤノンEOS学園、ジャムフォトスクール、リコーフォトアカデミー講師。日本写真協会、日本作例写真家協会会員。カメラグランプリ選考委員。
記事で紹介された製品
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11-20mm F/2.8 Di III-A RXD b060(Model )
11-20mm F/2.8 Di III-A RXD (Model B060)は、大口径F2.8でありながら小型軽量と高い描写力を実現。コンパクトなAPS-Cサイズミラーレスカメラボディとのバランスもよく、普段使いとして最適です。広角端11mmでは最短撮影距離0.15m、最大撮影倍率1:4と驚異的な近接撮影能力を実現し、パースペクティブの効いたデフォルメ効果を活かしたワイドマクロ撮影が可能。また、AF駆動には静粛性に優れたステッピングモーターユニットRXD (Rapid eXtra-silent stepping Drive)を搭載しており、静止画だけでなく動画撮影にも適しています。加えて、屋外での撮影を考慮した簡易防滴構造や防汚コートを採用するなど、超広角大口径F2.8の高画質を手軽にお楽しみいただくことができる、実用性の高いレンズです。