2023.10.31
フォトグラファー wacamera氏が感じた、タムロン17-50mm F4 (Model A068)は「撮りたい!」気持ちに応える魔法の万能レンズ
フォトグラファー wacamera氏が感じた、タムロン17-50mm F4 (Model A068)は「撮りたい!」気持ちに応える魔法の万能レンズ


フォトグラファーとして活動を始めて早13年。これまでたくさんのレンズを使って仕事撮影や趣味の撮影をこなしてきました。時代が変わりスマホのカメラが進化して、もはやカメラなどいらないのでは?と囁かれる昨今、それでも私が一眼のカメラを使い続けるのには理由があります。ファインダーを覗いてピントを合わせると、際立つ被写体と立体的に写し出すのに必要なボケ感。そう、私は何よりもF値の明るいレンズを愛しているのです。故に単焦点レンズが好きで、どんなに荷物が重くなっても、海外へは必ず単焦点レンズだけで構成して持ち出すほどです。
そんな私が今回、TAMRON 17-50mm F/4 Di III VXD (Model A068)という、いわば愛するレンズたちの真逆ともいえるズームレンズを使ってみたのには訳があります。それは、「知らない世界をのぞいてみたい」という好奇心です。
早速、美しい秋晴れの公園へと気軽に持ち出してみました。作例は全てjpeg撮って出しの状態なので、このレンズがいかに優秀であるか、参考にしてもらえたら嬉しいです。
一枚目の写真 焦点距離:20mm 絞り:F4 シャッタースピード:1/800秒 ISO感度:100 使用カメラ:Sony α7 Ⅳ
ドーム型の建築物と逆光が美しい場所で、モデルさんに真ん中に立ってもらいました。ちょうどお昼頃の時間帯で、トップ光に近いため、右上から光が差し込んでいるのがわかります。しかし無駄なフレアやゴーストが出ていないことに驚きました。よく見ると細かく垂れ下がった植物の蔓もディテールが潰れることなく解像しています。
F4と聞くと「ボケ感が作りにくいのではないか?」という方もいますが、確かにF1.4に比べればそうかもしれません。そこは否定しませんが、それ以上に大切なことを、この撮影で感じたのです。それは、「あ、今の表情いいな」と思った瞬間にズームリングを回すだけで、それを捉えることができることです。"ボケ感こそ写真の命"の私がこのレンズを使用したことで、むしろ撮りたい気持ちに応えてくれることが心地よいことに気がついたのです。
またオートフォーカスの速さも申し分なく、純正レンズに匹敵する快適さでした。これは私が今まで純正にこだわり続けてきた理由を覆す驚きでしたし、正直使っていて不満点がないことに困惑するほどでした。例えば想像してみてください。ヨーロッパの美しい建築、可愛い街並み、夕陽に照らされた異国情緒あふれるハーバー、颯爽と街を歩くジェントルマン、それらをこの一本で残せることを。それはまさに、最強の感動となるのではないでしょうか。またこのレンズはズームリングを回してもレンズの長さが変化しないインナーズーム機構となっているため、安定したホールディングで非常に使いやすくなっています。まさにノンストレスで、撮影することを楽しませてくれるレンズだと言えるでしょう。
1枚目の写真を撮影した同じポイントで、ズームリングを回して少し寄りで撮影してみました。先ほどは広角20mmでしたが、打って変わってモデルさんの背景にボケを感じられるようになりました。そうか、F4でもボケ感は作り出せるのだ、と改めて感じた一枚となりました。そしてややトップ光により陰になっているモデルさんの顔のあたりに注目して欲しいのが、沈み込みすぎず、肌のなめらかさを残しながら、服の立体感も残っていることです。
同じポイントで真上の太陽にレンズをむけてみました。緑豊かな美しい木々から漏れる光がこんなにも美しいと教えてくれたのはこのレンズでした。意図してフレアやゴーストを出したい時もありますが、基本的にそのようなパターンは少なく、逆光条件ながら思い通りに表現することが出来ました。この時は10月に入り、過酷だった夏の強い光よりは秋を感じられる日差しでしたが、光源のまわりにやさしく広がる滲みや、四隅の解像感もしっかりあることに驚きました。
モデルさんに寄ってみた場合はどうなるのか、2枚目の写真より近づいて撮影してみました。先ほどより更に背景にボケを感じられるようになりました。ボケ感はいやらしくなく、程よくディテールを残しています。しかしはっきりと浮き出る被写体との境は非常に美しく、またF4のおかげもあり、髪の毛やまつ毛など、細かい部分の描写もパーフェクトです。
雑木林の中に入ってみると、たくさんの木漏れ日をみつけました。人間の目ほど優秀なレンズはありませんが、人間の目に映りにくいものもあります。それが玉ボケです。ここまでいくつかの撮影をしてみて、非の打ち所がない…これではレビューにならないのではないか?と焦り始めた私は、このレンズで玉ボケを作ったら一体どうなるのだろう?と思い、重なり合う葉の間から漏れる光にレンズをむけてみました。オートフォーカスからマニュアルフォーカスに変え、丸い形がわかるように少し絞ります。ファインダーの中で滲みながら動く木漏れ日は、まるでシャボン玉のようでした。
カメラを下に向けてみると、地面にも可愛らしい丸い木漏れ日が揺れていました。モデルさんのスカートにおちる、自然が作るパターンを瞬時に画角を変えて撮影した1枚です。50mmから25mmへ、1秒もかからないそのレンズワークは単焦点レンズにはない快適さでした。こういった何気ない瞬間にこそ、撮り手の気持ちが入り込むと考えています。
枯れた紫陽花というのは、どうしてこうも魅力的なのでしょう。私たちが見ている紫陽花は花の部分ではないからこそ、枯れてもその形を残してくれているのですが、それがまた儚くて尊いと感じます。公園の中を歩いていると、あちらこちらに枯れた紫陽花を見つけたのですが、日陰にばかりあったため、光を感じられるものを探してみました。すでにこの時までに2時間以上の撮影をしていましたが、このレンズは非常に軽いため、ボディのコンパクトさと相まって非常に軽快に撮影をこなすことができました。やっと見つけたこの紫陽花のガクに残る葉脈の細かさ、発色の良さ、そしてこのボケ感。何度でも言いたいこと。F4だってボケは作れるんだよ、と。
改めて、この日の撮影を振り返ってみると、非常に快適で撮りたいものにすぐアプローチできる自分がいたと感じました。普段はガチャガチャと単焦点レンズを取っ替え引っ替えすることに慣れてしまっていましたが、こんなにもスムーズな撮影ができたのはこのレンズのおかげだったと言えます。
正直、使うまでは食わず嫌いということもあり、「とは言えF4ですし」とひねくれた感情がなかったとは言えません。しかし持ち出してみるといくつもの驚きがありました。軽いことはもちろん、インナーズームが快適であり、解像感が優秀で、逆光耐性がある、それらは体力が少ない私にとって最高のパフォーマンスを供給してくれていて、間違いなく撮れた写真に成果としても表れています。「撮りたい瞬間、思いのままに」撮れるレンズであり、これから行く旅先や日常でも撮影には必ず1本持って行きたい。17-50mm F4は、そんな万能レンズであることは間違いないでしょう。
記事で紹介された製品
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17-50mm F/4 Di III VXD a068(Model )
17-50mm F/4 Di III VXD (Model A068)は、静止画や動画撮影で使用用途の高い焦点距離をカバーした、超広角域17mmから標準域50mmまでをF4通しでカバーする広角ズームレンズです。ズーム全域で高い描写力を達成しており、画面周辺までクリアに描きます。AF駆動には静粛性・俊敏性に優れたリニアモーターフォーカス機構VXD (Voice-coil eXtreme-torque Drive)を採用し、高速・高精度なAFを実現。また、インナーズーム機構の採用により、ズーム時に長さが変化しないため、静止画撮影だけでなく、ジンバルなどに搭載してもバランスがとりやすく、動画撮影にも最適です。さらに、広角端で最短撮影距離0.19m、望遠端で0.3mと近接撮影能力が高く、被写体に思いきり寄れるため、様々な撮影シーンで個性豊かな一枚を撮影することができます。 機動力・利便性に長けたこの1本を持ち歩けば、静止画・動画問わず、ダイナミックな風景からスナップ撮影まで、レンズ交換をせずにバリエーション豊かな撮影が可能です。