2024.05.21
写真家 嵐田 大志氏がタムロン28-75mm F2.8 G2 (Model A063)で切り取る小さな子どもとのお出かけスナップ
写真家 嵐田 大志氏がタムロン28-75mm F2.8 G2 (Model A063)で切り取る小さな子どもとのお出かけスナップ


はじめまして、東京を拠点に活動しているフォトグラファーの嵐田です。主に家族や都市光景、自然風景などを撮っていて、国内外のメディアに写真を提供しています。
この度、タムロン28-75mm F/2.8 Di III VXD G2 (Model A063)ニコン Z マウント用をお借りし、5歳の娘との日常風景や小旅行を中心に撮影しました。普段は50mm前後の単焦点レンズを使用することが多いのですが、広角(28mm)から中望遠(75mm)まで幅広くカバーできる本レンズによって、自分の写真のスタイルがどのように変化するか楽しみでもありました。
では早速、写真を交えて本レンズの魅力を見ていきたいと思います。
一枚目の写真 焦点距離:焦点距離:28mm 絞り:F2.8 シャッタースピード:1/200秒 ISO感度:100 使用カメラ:ニコン Z6 ll
撮影時期はちょうど桜が満開を過ぎ、散り始めた時期でした。落ちた桜の花びらと木漏れ日が美しい詩のように感じて撮った1枚です。50mmの焦点距離が好きなため、ズームレンズを予め50mmにセットしておき、必要に応じて広角側や望遠側にズームアウト/ズームインするという使い方をしていいました。この写真は見たままの感じに撮りたかったので、そのまま50mmで撮影しました。
今年の桜は、地域によって状況は異なるとは思いますが、満開の時期に雨風が強いことが多く、木を全体的にフレームにおさめようとすると葉桜が混じり、撮りにくく感じました。レンズを望遠端の75mmにズームインして、枝ぶりが綺麗な箇所を切り取るように撮りました。開放にも関わらず、画面の端まで花びら1枚1枚がとても解像度高く描写されており、本レンズの基本性能の高さが確認できました。
伊豆に小旅行に出かけた際に、電車の車窓から撮った1枚です。焦点距離は30mm、広角端からわずかにズームインしています。乗り物の中からの撮影のように、自分が撮影ポジションを変えたりすることができないシチュエーションでズームレンズは真価を発揮します。ソフトフィルターのように見えるのは、電車の窓に潮が付いていたからなのですが、遠い記憶のなかの光景のような仕上がりが気に入っています。
長男(14歳)と長女(5歳)の歳の差ショットです。50mmの単焦点レンズで家族の写真を撮ってきましたが、今回、28mmの使いやすさに改めて気付かされました。このレンズの28mmの描写が魅力的というのもありますし、写し込める範囲とボケ量が家族と風景のバランスを考えると実にちょうどいいのです。本レンズのなだらかな周辺光量落ちは、こういった写真ではかえって味のある効果だと思います。
特徴のある壁に落ちる木漏れ日に惹かれて撮った1枚。歪みがほとんどないので、こうしたミニマルな写真にもマッチしたレンズだと感じます。基本ポジションの50mmで撮影。建築物などを端正に撮りたいときは50mm以上の焦点距離がおすすめです。影のトーンの出方もなだらかです。
小さなお子さんがいる家庭では、日常的に写真を家の中で撮ることが多いのではないでしょうか。普段はF2以下の明るい単焦点レンズを使うことが多いので、F2.8で素早い子どもの動きをぶれなく撮れるか心配でしたが、杞憂でした。ISO感度をほとんど上げる必要なく、狙いどおりの明るさで撮ることができました。ちなみに28mmはテーブルの向かい側から座ったまま反対側の人や料理が撮れるところも魅力です。
これは筆者の感覚的なところで恐縮ですが、本レンズは色のりが良いと感じます。こちらの記事の写真はいずれも撮影後に色調補正をおこなっているのですが、もとの写真の色合いが綺麗なので編集がしやすいと感じました。光が当たっている部分と影になっている部分のトーンのつながりも自然です。
レンズを箱から取り出してみて驚いたのはまず筐体のスリムさと軽さ。重さは550gしかありません(ニコンZ用)。
「F2.8通しの標準ズームレンズは大きく重い」という固定観念をくつがえされます。また、筐体の高級感のある触り心地がテンションを上げてくれます。
今回の撮影で多用した28mm/50mm/75mmの3つの焦点域はもちろん、35mm域など他の焦点域の描写力もとても高く、単焦点を複数持ち歩いているような感覚で運用ができました。タムロンさんは必ずしも本レンズをパパ・ママレンズとしては売り出していないですが、これは小さな子ども連れにとっては大事なポイントではないでしょうか。子どもが小さく、物理的に距離を取れない(離れられない)場面では28mm〜35mmで撮り、自宅のなかなど安全が確保できる際には50mm〜75mmで撮るなどの柔軟な使い方ができると思います。
また、オートフォーカスがとても速く静かです。瞳AFの精度も高いので、ピントのことは気にせずにフレーミングに集中することができました。
今回、本レンズの使用を通じて、自分が思いのほか28mmが好きだと分かったことも大収穫でした。機材を通して、自分の好き嫌いや得手不得手、被写体への新しいアプローチを発見できることはとても素敵なことだと思います。