2024.06.21
写真家 松尾 純氏がタムロン28-75mm F2.8 G2 (Model A063)ニコン Z マウント用で撮る、オーストラリアの旅
写真家 松尾 純氏がタムロン28-75mm F2.8 G2 (Model A063)ニコン Z マウント用で撮る、オーストラリアの旅


写真家の松尾 純です。秋を迎えるオーストラリアに行ってきました。前半はビクトリア州郊外にある農家に滞在し、後半にはメルボルンとシドニーの街をスナップしながら撮り歩きました。
荷物や移動の多い旅だったので機材は軽量コンパクトに、できればレンズ一本でフットワーク良く動き回りたいと思っていました。多様な景色や被写体を考えるとズームレンズが便利ですが、F値の明るいものは大きく重たい印象。
旅の準備でレンズ選びは楽しくもあり悩ましいですよね。私は、タムロン28-75mm F/2.8 Di III VXD G2 (Model A063)ニコン Z マウント用が届いて、そのもやもやがすっと晴れました。広角域から望遠域まで通してF2.8という明るさの大口径ズームレンズでありながら、ペットボトル一本分の重量とそのスリムな形状で、かばんからの出し入れもスムーズ。
「これ一本で行ってみよう」そう思わせてくれました。
一枚目の写真 焦点距離:51mm 絞り:F8 シャッタースピード:1/320秒 ISO感度:800 使用カメラ:ニコン Z 8
まずはオーストラリアのほぼ最南端に位置する田舎町の農家を訪れました。写真の女性は異業種から農業の世界に飛び込み、この地に移住してきた人です。夕方、敷地を自由に歩く彼女を光をたっぷり取り込んで撮影しました。フォーカス追従性が高かったため、フレーミングや光の入り方に集中でき、逆光にも関わらずフレアやゴーストのない、すっきりとした優しい写真に仕上がりました。
オーストラリアは暖かいイメージですが、秋の早朝は霜が降りるほど冷えます。太陽が出てきて霜が溶け始めた頃に撮った一枚。周辺部までクリアで高精細な画像が得られ、清々しい朝の空気感を描写してくれました。
私は広角で被写体にぐっと踏み込んで撮るのが好きです。それだけ近づいても自然体でいてくれるのは、長い時間を共に過ごしているおかげだと思います。広角端の開放で撮ると青空などで周辺減光が目立ちがちですが、28mmで撮ったこの写真では程よい階調になっています。また、背景のボケもなめらかで優しい印象です。
朝露で濡れた落葉が美しく、斜光を利用し露の立体感をより際立たせるために少し絞って撮影しました。
28-75mm F2.8 G2を使っていて一番驚いたのは、その最短撮影距離です。思い切って近づいてフォーカスすると、余裕でシャッターが切れます。どこまで近づけるか試した結果、一枚の葉を画面いっぱいに撮影できるほど近づけました。レンズフードが葉に触れそうなほどの距離です。
次に向かったのは、オーストラリアの芸術の中心地メルボルン。ストリートアートや歴史的建造物が目を惹き、スナップ撮影が楽しい街です。最初に入った伝統的なエスプレッソバーで、たまたま隣に座っていた男性の渋い身のこなしにカメラを向けました。座席に座ったままでも帽子との程よい距離を持てたのは、ズームレンズのおかげです。窓のない暗い店内でもISOを上げすぎず、開放値で撮影することで安定したシャッタースピードを確保できました。
ストリートアートで埋め尽くされたアートレーンの風景を望遠端で切り取った一枚。壁の質感やシャドウ部の再現性もきれいに描写されています。
男性の後ろ姿と印象的な影をとっさに撮りました。ほんの一瞬の出来事でしたが、シャッターチャンスを逃さなかったのはこのレンズのコンパクトさゆえの起動力だったと思います。
歴史的建造物であるビクトリア州立図書館を訪れました。ドーム型の天窓から差し込んだ光に照らされる白壁と、規則正しく並ぶ丸い照明をズームインしながらバランス良くフレーミング。白壁のハイライトからシャドウ部までの階調や、手前にある照明の前ボケがとてもなめらかです。