2023.05.31
まさに星空を撮りに出かけたくなるレンズ! 2本のズームレンズで撮る伊豆大島の旅
まさに星空を撮りに出かけたくなるレンズ! 2本のズームレンズで撮る伊豆大島の旅
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こんにちは、星景写真家の北山輝泰です。
今回はタムロンの20-40mm F/2.8 Di III VXD (Model A062)と35-150mm F/2-2.8 Di III VXD (Model A058)2本のズームレンズで撮影した、伊豆大島の星景写真ツアーの様子をご紹介したいと思います。
多くの機材を持って行けない今回のような旅こそが、ズームレンズが活躍するシーン。あらかじめ旅のコンセプトを決めて、それに見合ったズームレンズを選ぶことが重要になります。私の場合、星空撮影をすることが前提となるため、レンズは24mm以下の広角をカバーでき、かつF値が2.8以下の明るいものを選ぶようにしています。さらに、月と風景の撮影も行う場合には、標準から中望遠までのレンズも必要になります。
今回の伊豆大島の旅は、沈む細い月から天の川の出まで、一晩で色々な被写体を撮影できるタイミングで開催しました。そのためこの2本のレンズが大活躍するはず・・・ということでしたが、結果は果たして!?
今回の伊豆大島星景写真ツアーの始まりである竹芝客船ターミナルで撮影した一枚です。マストのオブジェが象徴的なこの場所に来ると、いよいよこれから船旅が始まるぞという気持ちになり胸が高鳴ります。20-40mm F2.8の20mm側では、広角特有のパースを強調した撮影ができます。竹芝駅へ向かうゆりかもめがタイミング良く通過したのでパシャリ。
伊豆大島へは高速船「セブンアイランド号」で向かいます。窓側の席に座れば東京湾沿いの風景を楽しむことができ、レインボーブリッジを通過するタイミングですれ違った漁船を流し撮りして遊んでみました。軽量かつコンパクトな20-40mm F2.8は、狭い船内でも取り回しが容易です。
港では今回お世話になる伊豆大島温泉ホテルさんの送迎バスが出迎えてくれました。みなさん大きな荷物に悪戦苦闘しながらバスに乗り込んでいきます。今回の撮影ツアーは「こと座流星群」の極大日に合わせて設定していたため、複数台のカメラを持ってこられている方もチラホラいらっしゃいました。あとは天気が味方をしてくれるのを期待するだけですが、島の上空は厚い雲に覆われていて、祈るのみです。
ホテルに着いたら早速夜の撮影の準備が始まります。協賛メーカーであるH&Yフィルターのスタッフさんが、参加者の方に使い方のレクチャーをされていました。今回は夜景と一緒に星空を撮影できる場所を実習場所に選んだため、ハーフNDフィルターが必要になります。普段使わない機材を実践で試すことができるのも星景写真ツアーの醍醐味です。
撮影の前はみなさんお待ちかねの夕食です。今回は島の特産でもある椿油を使った天ぷらがメインの豪華な和食膳でした。品数がとても多く、20mmの広角でも写し撮れないほど。大満足の夕食を食べ終わったらいよいよ星空撮影に向けて出発です。ちなみに、講師の私は天気ばかり気になってしまい、せっかくの食事を味わって食べる余裕はありませんでした・・・。
今回のメインである星空撮影は、曇りで一つも星が見えない状態からのスタートでした。しまいには小雨まで降る始末・・・。これは厳しいかもと思っていたところ、少しずつ雲間から星が現れて、参加者の方から歓声があがります。ようやく見えた金星がひと際まぶしく輝く中「やっと出てきてくれたね〜!」と金星に手を振っているように見える参加者さんのシルエットをこっそり撮影してみました。
今回のツアーでは、事前にオンライン講習を行い、私から撮って欲しい被写体の紹介をしていました。その中でも目玉であった「マジックアワー中に沈む細い月とおうし座のすばるの接近と熱海方面の夜景」は、残念ながら雲に阻まれて撮ることができませんでした。この雲の向こうに月とすばるがあり、それを 35-150mm F2-2.8で撮影するのを楽しみにしていただけにとても残念でした。
撮影実習中、昇る春の星座も撮影することができました。その代表格であるおおぐま座の北斗七星が雲間から顔を出しています。このように星座や特徴的な星の並びを撮影する際は、必ずソフトフィルターを使うようにしています。この写真は20-40mm F2.8にH&Yフィルターの「Magnetic White Promist 1/4」を取り付けて撮影しています。
撮影実習の後半ではホテルの屋上にて三原山と星空を撮影しました。ここでの狙いは三原山と南中する天の川の撮影ですが、移動直後は雲がたくさんあったことと、夜中の2時以降にならないといい位置に天の川がやってこないため、まずはどれくらいの画角で撮影するかのシミュレーションを行い、少し仮眠をして夜中の撮影に備えることになりました。
そして夜中の3時に撮影したのがトップでもご紹介したこちらの写真です。実はこの写真は600枚ほど定点撮影した中の一枚なのですが、ほとんどが雲に阻まれてボツカットになってしまいました。この一枚が撮れた瞬間、私は夢の中でしたが、動き続けてくれたカメラに感謝です。この写真は赤道儀を使わず撮影していますが、ほぼ点像で撮影することができています。24mm以上になると短時間でも地球の自転で星の流れが目立ってくるため、赤道儀を使わないor使えない撮影では、できるだけ20mm以下のレンズで撮影するようにしています。
2日目午前のフリータイムは、レンタルバイクを借りて島内の景勝地を巡りながらスナップ撮影することにしました。伊豆大島は一周が約40kmで、原付バイクでも2時間程度あれば十分回ることができます。伊豆大島の景勝地でも特に人気なのがバームクーヘンの断面のように見える「地層大切断面」ですが、それと一緒に今回の相棒のレンタルバイクを撮影してみました。
前日の夜は天候が悪く、予定していた35-150mm F2-2.8を使うことができなかったため、昼間のロケハンでこのレンズを中心に撮影を行いました。F2から始まるとても明るいズームレンズであることと、手ブレ補正機構VCにより、ある程度暗い環境でも手持ちで撮影することができます。
この写真の海に聳え立つ奇岩は筆島と呼ばれています。撮影した展望台からの眺めは格別です。ここは日本の渚100選にも選ばれている美しい場所ですが、荒波が押し寄せる場所でサーファーにも人気です。筆島はその過酷な環境でも崩れることなく立っていることから「神の宿る岩」とも呼ばれています。筆島の大きさがわかるように、砂浜を歩くサーファーを入れ込んだ画角をチョイスしました。
野田浜は伊豆大島の北西に位置しており、夕景観望スポットとして有名です。目を惹く鐘のモニュメントがあり、密かな写真映えスポットにもなっています。ここからは海を挟んで伊豆半島も見ることができ、天気の良い日は富士山も見ることができます。タイミング次第で元町港に入出港するジェット船や大型客船、さらに貨物船や漁船など様々な船が行き交う様子を見ることができるので、望遠レンズを持ってのんびり撮影するのも面白いでしょう。
伊豆大島での最後の食事は、特産品であるくさやの定食をいただきました。店内に漂う独特のにおいに参加者さんはびっくりされていましたが、実際に食べ始めて見ると旨味が凝縮された肉厚の身の美味しさに夢中になってしまいました。旅のラストにふさわしいご飯をいただいて、いよいよ帰り支度となりました。
復路便の出発港は岡田港でした。今回のツアーの主催でもある東海汽船さんのカラフルなコンテナが並ぶ港を過ぎると、私たちが乗船するジェット船が待っています。頭上はこの旅一番の青空が広がっており、この晴れ間が夜にあればと少し恨めしい気持ちになりましたが、またのお楽しみということで、みなさん笑顔で帰られました。
帰路の途中、新宿駅のホームでふと空を見上げると、昨日雲に阻まれて撮れなかった細い月がぽっかりと空に浮かんでいました。ホームの天井のわずかな隙間から月を見ていると、まるで昨日会えなかった代わりに今日会いに来てくれたように感じて、カメラを取り出し撮影することにしました。サンドウィッチ構図で空に浮かぶ月を強調して撮影を行なっています。
スナップのように撮る旅の風景から、少し本格的な星空撮影までを2本のズームレンズで撮り切ろうというのが今回の撮影のコンセプトでしたが、実際にやってみると荷物が少なくなることでより軽快に動けるため、ロケーションをどんどん変えながらアクティブに撮影することができ、写真を撮る楽しさを再認識することができました。
また、レンズ2本とボディ1台という組み合わせは、本格的なカメラバッグではなくインナーバッグでも収納できるため、例えば登山用のザックに全部まとめて出かけることもできます(実際に、今回は70リットルの登山用ザックに衣類や三脚を含むすべての機材を収納することができました)。
また今回はα7 Ⅳ(3300万画素)と組み合わせて撮影を行いましたが、昼間のスナップ撮影時もAFの合焦スピードがとても速く、ストレスなく撮影することができます。さらに星空撮影で気になる各収差も少なく、十分満足できる写真を撮ることができました。日中から夜までレンズ交換することなく撮影を楽しみたいという方や、なるべく身軽に撮影を楽しみたいという方には、今回の2本のズームレンズの組み合わせは特におすすめです。
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Teruyasu Kitayama 北山 輝泰
1986年東京生まれ。日本大学芸術学部写真学科を卒業後、福島県に移住し天文インストラクターとなる。その後、天体望遠鏡メーカーに転職し、営業マンとして7年勤務したのち、星景写真家として独立する。山梨県富士山麓を主なフィールドに星景写真を撮影しつつ、オーロラや日食などの様々な天文現象撮影を行うため、海外遠征も積極的に行なっている。現在は、天文雑誌「星ナビ」ライターや、アストロアーツ天文講習会の講師、ソニーαアカデミーの銀座校、大阪校講師などを務める傍ら、自身でも星景写真ワークショップの企画、運営などを行なっている。
記事で紹介された製品
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20-40mm F/2.8 Di III VXD a062(Model )
20-40mm F/2.8 Di III VXD (Model A062)は、携帯性を徹底的に追求した、新たな大口径標準ズームレンズです。超広角20mmからはじまり、標準域の40mmまでをカバーしながら、クラス最小・最軽量のサイズ感。ズーム全域で美しい写りも実現しており、静止画撮影だけでなく、Vlogなどの動画撮影にも活躍します。静粛性・俊敏性に優れたリニアモーターフォーカス機構VXDを採用し、高速・高精度なAFを実現。静止画・動画問わず気軽に持ち出し撮影を楽しむことができる、今までにない新しい大口径標準ズームレンズです。