2023.03.07
写真家 鈴木 啓太| urban氏が大口径望遠ズーム、タムロン35-150mm F2-2.8 (Model A058)1本で撮影するポートレート
こんにちは!写真家の鈴木 啓太|urbanです。
2019年にタムロンから発売された初代ポートレートズームレンズ、35-150mm F/2.8-4 Di VC OSD (Model A043)は、数あるタムロンレンズの中でも私が最も使用したレンズのひとつです。35-150mmという、ポートレートを撮影する者にとって多用する焦点距離を1本にまとめ、かつF2.8スタートの明るさからなるModel A043は、単焦点レンズを数本持っていく撮影スタイルから解き放ってくれたと記憶しています。
そして今回紹介するタムロン 35-150mm F/2-2.8 Di III VXD (Model A058)は、新しく生まれ変わった大口径ズームレンズとしてミラーレスカメラに対応し、ズームレンズながら広角端が開放F2という前代未聞のスペックで、初代の性能を大きく凌駕するレンズに進化。ポートレートだけではなく風景撮影にも申し分なく、与えられたフィールドを超えた新たな相棒として現在に至ります。
一枚目の写真( 焦点距離:59mm 絞り:F8 シャッタースピード:1/320秒 ISO感度:100 使用カメラ:ソニー α7 Ⅳ)
ここで紹介する作品は、ロケ、スタジオ、そしてプライベートまで、タムロン35-150mm F2-2.8 (Model A058)のみで撮影したものです。ポートレートは撮影するシチュエーションで使用レンズが大きく変わるのが常です。
写真家たちは、最高の結果が得られるよう、最適なレンズの組み合わせを日々模索しています。35-150mm F2-2.8 (Model A058)はロケーションで多用する35mmから、飛び道具的に使う100mmを超える望遠までを1本でこなします。
スタジオ撮影、特にファッションにおいては、広角レンズで衣装を含めた全身を撮影した後、すぐさま望遠レンズに切り替えバストアップ撮影を継続するなど、現場全体の熱量を維持したシームレスな撮影が最も重要視されます。
今回の35-150mm F2-2.8 (Model A058)のように1本で満足のいく撮影ができるということは、単焦点レンズ使用時に発生しうるレンズ交換の手間、また、それ以上に問題となるレンズ交換時の撮影者-モデル間のテンションの断絶を回避することができます。双方のテンション、リズムの維持が重要となるポートレート撮影において、レンズ交換の必要なく画角を変え撮影を継続できることは、双方の高次なパフォーマンスの維持に大きく貢献していると感じています。
もちろんこれは、レンズ交換を必要としない単焦点レンズに匹敵する高スペックのズームレンズだからこそ成せる考え方で、全焦点距離で均一化された描写性能、AFスピード、瞳AF精度のどれが欠けていても成り立ちません。また、単焦点数本分を1本のレンズにまとめられることは、ライティング機材で荷物が多くなりがちな我々の大きな味方であり、さらにF2-2.8の明るさがあればボケの表現に事欠きません。ポートレートを撮る写真家たちにとって、タムロン35-150mm F2-2.8 (Model A058)の存在は、新たな時代の幕開けを感じさせるレンズであると確信しています。
Keita Suzuki 鈴木 啓太
家族写真&ポートレート写真家。カメラおよびレンズメーカーのセミナー講師をする傍ら、写真誌やwebコラムの連載などライターも手掛ける。また、都内近郊にて月2回100人規模のフィルムカメラワークショップ「フィルムさんぽ」を5年以上継続して行うなど、精力的に活動している。2021年自身初の著書となる「ポートレートのためのオールドレンズ入門」が玄光社より発刊された。