2023.10.27
写真家 熊切 大輔氏がスナップ写真を軽快に楽しむ、タムロン35-150mm F2-2.8 (Model A058)ニコン Z マウント用の魅力
写真家 熊切 大輔氏がスナップ写真を軽快に楽しむ、タムロン35-150mm F2-2.8 (Model A058)ニコン Z マウント用の魅力


写真家の熊切 大輔です。スナップ写真においては、軽快で汎用性が高いレンズが最大の武器となります。今回試したタムロン35-150mm F/2-2.8 Di III VXD (Model A058)の幅広い焦点距離は、被写体の幅も広げてくれました。加えてF2-2.8という美しいボケ味を生む大口径レンズとしての表現力は、ポートレートはもちろん、スナップ撮影においても大いに楽しめることを実感することができました。そんな幅広い被写体に対応できる35-150mm F2-2.8を様々なシーンで使ってみました。
一枚目の写真 焦点距離:43mm 絞り:F2.1 シャッタースピード:1/2000秒 ISO感度:100 使用カメラ:Nikon Z 8
人との出会いもスナップ写真の醍醐味だと言えます。1枚目の写真は、浅草の街を見下ろすスポットで出会った素敵なカップルの、仲睦まじい姿を切り撮らせていただいたものです。そんなフォトジェニックな被写体を活かすには背景情報が重要です。浴衣姿と浅草寺の組み合わせはもちろん相性が良いのですが、ボケ味が美しいレンズの場合、ぼかし過ぎには注意が必要です。ある程度背景情報を残すことによって、その場所で撮る意味、ストーリーを作り上げたいものです。
グラスのオブジェが美しくライティングされたスポットで、そのボケ味の表現を楽しんでみました。連続性のある被写体はピントをどこに合わせるかで、その表情が大きく変わります。中間点付近を狙って、ボケ味のサンドイッチで生まれる造形の美しさを演出してみました。望遠端の圧縮感とF2.8のボケ味の共存は、思わぬデザインを生み出してくれました。
高台にあるオリンピックのジャンプ台に初めて登らせていただき、札幌の街並みを一望できる絶景を切り撮ってみました。この街の景色は個性的で面白く、新しいマンション群が立ち並ぶ光景に余計な看板が写り込んでいません。無機質でまるでCGで描いたようなくっきりとした街並みは、歪みがなく、高い解像感で一つ一つの建物がはっきりと描ききれています。まさにレンズの描写能力の高さを証明している一枚です。
季節外れのジャンプ台で、休まず練習する選手たちに出会うことができました。孤独な戦いの緊張感が伝わってきます。一本一本丁重に、彼らの飛ぶ姿を捉えました。35-150mm F2-2.8にはリニアモーターフォーカス機構VXDが採用されているので、素早さと正確性、そしてスムーズさを兼ね備えたAFは、美しく飛行する彼らのフォームをしっかりと捉えてくれました。
ラベンダーが群生するスポットを訪れてみました。一面に広がる花の姿を切り撮るのも楽しいのですが、35mm側で0.33mまで寄れる近接撮影能力を活かして、寄って撮影してみました。茎の長いラベンダーは横から写すのも美しいのですが、ここでは見下ろして撮ってみました。茎が放射状に広がり美しいデザインを生み出します。それを35-150mm特有の柔らかいボケ味を活かして撮影すると、立体感のあるいつもと違う表情で捉えることができました。
北海道神宮を訪れると雨が降ってきました。簡易防滴構造が効いているので、雨の日でも安心して撮影を楽しめます。神聖な空間は水に濡れてより神秘的に感じられます。紙垂についた粒だった水滴がしっとりとした雨の表情を演出しています。さらにその背後に、円形絞りによる美しい玉ボケが水滴の粒と韻を踏むように、キラキラと輝いていました。
通常の街スナップでも様々なシーンで撮影してみました。都市は魅力的なデザインに溢れています。建造物が作り出す直線や曲線が描くシャープなデザインを上手く構図に活かしてみました。広角側でも嫌な歪みのない描写能力は、対角線を活かした構図も素直に表現してくれました。そして新しいBBAR-G2コーティングは、強い逆光条件でも被写体のディティールをシャープに描き出してくれました。
やはりポートレートでは表現力の豊かさを実感できます。私は街でのスナップポートレートは、その背景情報を重視します。大きくボケすぎて何処か解らない背景ではなく、その街ならではの表情を活かしたいと思っています。適度なボケ味の向こうにある奥行き感。そこにストーリーを感じさせるのです。街灯を活かした薄暗い中で、彼女の一瞬の表情を柔らかく写し出すことができました。
モデル:まどか
情報量の多い写真。写真は引き算と言われますが、足し算も楽しいのです。広角で捉えた街の表情は隅々まで情報にあふれています。鋭利な街の陰影。その背景に写る色鮮やかな青空に浮かぶ柔らかい雲のディティール。そこを行き交う人々が生み出す一瞬の表情、そして動感。表現力豊かなレンだからこそ写し出せる世界があるのです。