2023.12.25
写真家 中野 耕志氏が機動力に優れたタムロン150-500mm F5-6.7 (Model A057) ニコン Z マウント用で野鳥と飛行機に迫る
写真家 中野 耕志氏が機動力に優れたタムロン150-500mm F5-6.7 (Model A057) ニコン Z マウント用で野鳥と飛行機に迫る


野鳥や飛行機など、動体撮影の分野では一眼レフが主流でしたが、ニコンZ 9の登場とともに動体撮影におけるミラーレス新時代が始まりました。それにともない最新設計のレンズも続々と登場し、このたびタムロン150-500mm F/5-6.7 Di III VC VXD (Model A057)ニコン Z マウント用が発売されたのに際し試用する機会を得ましたので、野鳥撮影と飛行機撮影における本レンズのファーストインプレッションをお届けいたします。
一枚目の写真 焦点距離:500mm 絞り:F8 シャッタースピード:1/2000秒 ISO感度:400 使用カメラ:ニコン Z 9
河川上空を飛び回りながら魚を探すミサゴ。水中の魚に狙いを定めると豪快にダイビングして捕食します。画面一杯にミサゴの雄姿を捉えるためにDXクロップして750mm相当で撮影し、かつ翼が切れないよう留意しながらフレーミングしました。150-500mm F/5-6.7の優れた描写性能のおかげで、ミサゴの眼光鋭い表情を捉えることができました。
■F-15イーグル
一般的に大口径単焦点超望遠レンズは高性能かつ高額モデルであり、いっぽう小口径超望遠ズームレンズは性能を抑えた廉価版モデルという傾向があります。一昔前の常識では400mmを超える超望遠ズームレンズといえばテレ端の画質安定性に欠けるものが多く、私自身もそんな印象を持っていました。しかしこのたびタムロン150-500mm F/5-6.7を試用してみたところ、あまりの高性能ぶりにこれまで抱いていた超望遠ズームレンズに対するネガティブな印象は払拭されました。
■ユリカモメ
150-500mm F/5-6.7を手にしてまず向かったのは、多くの野鳥が生息する水辺です。冬季はカモ類やカモメ類など、比較的大型で撮影しやすい鳥たちが渡来してくるので、レンズインプレッションには最適な時期なのです。本レンズは150mmから500mmまでの3.3倍ズームで、中望遠から超望遠までの扱いやすい焦点距離をカバーしています。
■カモ類の群翔
野鳥撮影においては基本的にテレ端500mmのみを使うことがほとんどなのですが、ズームを引いて生息環境を取り入れた風景的なショットを撮ることもあります。寄りと引きの両方をワンアクションで撮影できるという、単焦点レンズでは成し得ない素早い画角変化に対応できるのはズームレンズならではの利点です。
■ハクセキレイ
小鳥や猛禽類の撮影時は500mmでは足りないことも多々あるのですが、高画素のカメラであればカメラ側のクロップ機能を活用するのも手です。私が使用するニコンZ 9とZ 8は約4500万画素のイメージセンサーを搭載していますが、DXクロップ機能を使うと画素の一部を切り出すことで1.5倍の望遠効果が得られます。これは本レンズの500mmが750mm相当の画角で撮影できるので、野鳥撮影にはとても有利な機能です。その際画素数は1900万画素に目減りしますが、ほとんどの用途において十分な画素数といえるでしょう。
本レンズの質量は1720g+三脚座155gの計1875gで、500mmの超望遠レンズであることを考慮すると軽量といえるでしょう。ニコンZ 9と組み合わせたシステム重量は3215g、ニコンZ 8と組み合わせたシステム重量は2785gで、手持ち撮影も苦にならず機動力抜群です。特筆すべきはそのコンパクトさで、鏡筒を縮めた状態で212.3mmと取り回しやすいうえにバッグへの収まりも良く、極限まで小型化を追求された500mmであることを実感できます。
■アメリカヒドリ
テレ端500mmの開放F値がF6.7 とやや暗めなので、実写するまでAF速度や精度に不安がありましたが、リニアモーターフォーカス機構VXD(Voice-coil eXtreme-torque Drive)により、飛翔する野鳥に対してもほぼ無音で素早く合焦することには驚きました。フォーカス追従性も高く、ひとたび捉えた被写体を連続的に合焦してくれるので、シャッターチャンスを逃しません。
また最短撮影距離もワイド端150mmでは0.6m、テレ端500mmでは1.8mと、野鳥の部分アップはもちろん、植物や昆虫などテレマクロ的な撮影にも使いやすいと感じました。
フィールドでの好感触を得て、撮影後にパソコン上で撮影した写真をチェックしてみましたが、その仕上がりは期待以上でした。16群25枚の光学系には特殊硝材であるXLDレンズ1枚、LDレンズ5枚、複合非球面レンズ2枚を効果的に配置し、色収差を抑制したクリアな写りを実現しているだけに、ピントはシャープだし発色もヌケも良く、野鳥写真のみならず幅広い自然写真に最適な超望遠ズームレンズだと感じました。
■ブルーインパルス
続いて飛行機撮影の現場にも150-500mm F/5-6.7を持ち込みました。今回は基地外周での通常訓練撮影はもちろん、航空祭でのブルーインパルスなども撮影しましたが、野鳥撮影に続き飛行機撮影でも好印象でした。
■F-15イーグル
重量バランスが良く飛行機の動きに合わせてレンズを振りやすいのに加え、手ブレ補正機構VC(Vibration Compensation)により正確なフレーミングが可能です。AFも高速・高精度で、高速でカッ飛ぶジェット戦闘機にも合焦し続けます。
■F-15イーグル
空バックでの撮影が多くなる飛行機写真においては周辺光量不足があると特に目立つものですが、本レンズではズーム全域において周辺光量不足は気にならず、ピントも極めてシャープで飛行機の持つ金属の質感を余すところなく表現してくれました。