2020.06.18
写真家 別所 隆弘氏がフルサイズミラーレス⽤望遠ズーム タムロン70-180mm F2.8(Model A056)に見出す「新定番」
こんにちは、別所です。今回の記事は、ついに世界中が待ち望んでいたソニーEマウント用大口径望遠ズームレンズ TAMRON 70-180mm F2.8 Di III VXD(Model A056)についてのお話です。そして最初に結論を書いておくと、再びタムロンは「新定番」を更新しました。
すなわち、
1. ミラーレスにふさわしい小型・軽量性
2. それにも関わらず光学性能やメカ性能が優れている
3. 加えて接写性能による表現の多様性
これまで「大口径レンズは重たく、大きく、値段も高い」というのが暗黙の了解でした。そして、ミラーレスがデジタルカメラのスタンダードになり、標準や広角は比較的軽くなって以後も、望遠ズームだけは頑なにガラスの凶器であることを辞めずに来ましたが、ついにタムロンがこの最後の牙城を突き崩しました。いわゆる「大三元」と呼ばれるF2.8通しの望遠ズームレンズで1キロを切ったことは、端的に驚異です。これにより、望遠ズームの世界にも、今後「軽量化」のトレンドがやってくることになるでしょう。それほどに、この「軽さ」は大きなメリットを撮影者にもたらします。
一枚目の写真( 焦点距離:88mm 絞り:F/4 シャッタースピード:1/500秒 ISO感度:100)
望遠レンズの注目ポイントとして、AF性能があげられます。広角レンズならば多少AFが遅くても、そもそも被写体が広いのでそれほど問題にならない場合も多いのですが、望遠レンズは被写体にぐっと寄る性質上、少しの動きも大きな「変動」になってしまう。だからこそ俊敏なAF動作が必要ですが、70-180mm F2.8なら、この0.5秒でフレームアウトする鉄の塊にも食らいつきます。
何よりもやはり強調しなくてはならないのは、そのずば抜けた小型&軽量という特徴。このことはすでに僕がこのTAMRON MAGでこれまで書かせていただいた大三元の他の二本とも共通している、タムロンの新しいレンズが持つ最大の魅力です。
僕は夏の花火を撮影するために頻繁に山に登りますが、1キロでも機材が軽ければ、単純に楽に登れるというのにとどまらず、背中側の重量が減ることによって、例えばバランスを崩して転倒するというリスクも軽減できます。さらには、重たいものを持ち続けることによるメンタル的な部分での「しんどさ」も軽減されます。実際70-180mm F2.8 を片手に持って撮影していると、これまで大口径望遠ズームで一日撮影していた時に起こるような腱鞘炎的な腕の引きつりや肩こりを感じないことに驚きました。人間は、重たいものを長く持っていられるほどに強くはないのですが、その「弱さ」に対して寄り添ってくれるのが、タムロンのレンズなんですね。
そしてその長所は、まさに「大三元」が三本揃った時に、まるでガチャで引き当てた高レベル武器3つ揃ったときのセット効果のように、我々に強烈な恩恵をもたらします。一般的な大三元ズームレンズを三本揃えたときの重量は、大体3,500g前後の重量になります。ですが、このタムロンの大三元、セットになった時の重さは、なんと1,780g。ほぼ半分の重量。これは効きます。あなたの手に、あなたの肩に、あなたの腰に!セットで持ったときのこの軽量感こそが、写真家のメンタルを守り、いわばあなたの「表現」に最後の粘りを与えてくれるんです。
そう、それこそがタムロンの提示する「新定番」の方向性だと思っています。つまり、光学性能やメカ性能に一切の妥協がないままに、ミラーレス時代にふさわしい、軽快な撮影の「あり方」や「スタイル」を提示していくレンズ。なんともエモい方向性で戦ってくれるじゃないですか、タムロンさん。