2021.11.11
写真家 並木 隆氏が「万能レンズ」の高倍率ズーム タムロン18-300mm F3.5-6.3 (Model B061)で撮る描写力のある寄り、望遠スナップ
高倍率ズームのメリットは、レンズ交換をせずに広角から超望遠まで幅広い焦点距離を1本でカバーできることや、サイズがコンパクトであることです。旅行や山登りなどで荷物を減らしたいときには便利に使えて重宝するレンズですが、画質に関しては高倍率ゆえの限界がありました。悪いわけじゃないけれど、単焦点や描写性能に優れたレンズの写りを知っているだけに、作品撮りに使うには難しいという思いが否めませんでした。
でも、今回使用したソニー Eマウント用高倍率ズーム、18-300mm F3.5-6.3 (Model B061)は、これまでの高倍率ズームとはワンランク、いやツーランクくらい上の画質と言い切れるほど描写性能の高いレンズに仕上がっています。また、描写性能が如実に出る最短撮影距離を大幅に縮め、テレ側で0.99m、ワイド側では0.15mという、どの焦点距離でも寄れるレンズになっています。ワイド側ではワーキングディスタンス(レンズ先端から被写体までの距離)が5mm程度となるため、レンズ先端に被写体が触れるギリギリまで寄れることになります。このような場合、被写体を覆ってしまうレンズフードは外しましょう。また、被写界深度が浅くなるのでピント合わせは非常にシビアになります。マクロレンズでの撮影と同じレベルと思ってください。
実際に使ってみて思ったことは、ワイド側の最短撮影距離ではレンズが被写体を覆ってしまうので、光を活かすことが難しく、撮影できる被写体を探すのはかなり難しくなります。もし18mmで撮影するのであれば、最短撮影距離よりもやや長めの撮影距離にした方が、より多くの被写体に寄って楽しむことができるでしょう。焦点距離のこだわりがなければ、35mmや50mmくらいの方が、寄りでの撮影がしやすくなるでしょう。
テレ側も300mmあるので、前後のボケ味を活かしたり、圧縮効果を使ったりといった描写が可能です。開放F値がF6.3ということで、暗い、ボケないと思われるかもしれませんが、作品を見てもらえばわかるように、十分大きなボケ味を得ることができます。これは焦点距離によって被写界深度が浅くなっているからで、開放F値はあまり関係ありません。もしボケないときは、アングルを下げてできるだけ遠くの背景を入れるようにしてみましょう。
引きから寄りまで、焦点距離の幅だけでなく撮影距離の幅までも広げてきた今回の18-300mm F3.5-6.3は、どんな被写体でもこなすことができる、本当の意味での「万能レンズ」になっていると思いました。
Takashi Namiki 並木 隆
1971年生まれ。高校生時代、写真家・丸林正則氏と出会い、写真の指導を受ける。東京写真専門学校(現・ビジュアルアーツ)中退後、フリーランスに。花や自然をモチーフに各種雑誌誌面での作品発表。公益社団法人 日本写真家協会、公益社団法人 日本写真協会、日本自然科学写真協会会員。