2021.10.28
写真家 別所 隆弘氏が第2世代「G2」のタムロン28-75mm F2.8 G2 (Model A063)で撮影、「史上最高の大口径標準ズーム、ついに爆誕」
写真家 別所 隆弘氏が第2世代「G2」のタムロン28-75mm F2.8 G2 (Model A063)で撮影、「史上最高の大口径標準ズーム、ついに爆誕」
こんにちは、別所 隆弘です。今回、新製品のソニー Eマウント用大口径標準ズームレンズ、タムロン 28-75mm F/2.8 Di III VXD G2 (Model A063)を使用してみたのですが、このレンズ、タイトルにあるように、「史上最強の大口径標準ズーム、爆誕」なのです。二度と手放したくない、と思わせるほど強烈でした。何が強烈か?というと、もちろん写りです。早速このレンズを持って、岩手に行ってきました。岩手の八幡平。秋になりはじめの高原のグラデーションを、是非ともご覧ください!
一枚目の写真( 焦点距離:53mm 絞り:F8 シャッタースピード:1/250秒 ISO感度:100 使用カメラ:ソニー α7R IV)
なぜ今回の28-75mm F2.8 G2が最強なのか。かつて僕は、初代モデルA036のレビューを担当しました。タムロンで書かせていただいた初めての機会です。その時僕は、レビューの最後にこう書きました「何よりもまず軽さに感銘を受けました」。こう書きながら僕は自分で「写りを推すべきだったかなあ」と、ふんわり思ってたんです。もちろん、写りは全然悪くない。でもあの時は写り以上に「軽さ」が業界を激震させる理由になるだろうことを、僕は直観していました。その直観通り、その後発売される、一連のタムロンの業界激震系大口径ズームの進撃が始まるわけです。まさに進撃のタムロンとでも言いたくなる大躍進でしたね。
ミラーレス用レンズの軽量化は他メーカーにも波及し、百花繚乱の如く「軽量」を謳ったレンズが勢揃いするようになりました。そして今回、タムロンが原点回帰の28-75mmの第2世代を出したわけです。今やもう軽量化も限界に近づいている現状で、第2世代がどんなレンズになるのか。ちょっと不安もありました。たいして変わらなかったら、大コケする可能性もあるわけですから。しかし、実際に手にすると、不安は吹き飛びました。理由は簡単、だって今回は、「軽さ」を推すことより、撮影において何よりも大事なことが突き詰められていたのです。そう「写り」が、2021年現在のズームレンズ基準で最高クラスに仕上がっていました。
冒頭の写真で何よりもため息が出そうになるのは、描写の繊細さです。画面全域にわたって、手前から奥まで、右から左まで、上から下まで、画面の隅々から伝わってくる光景のクリアな印象が、作例で伝わるでしょうか?できれば全画素等倍でお見せしたいほどの画像です。パソコンのディスプレイで最大表示で見ると、その場にいた時の空気感まで思い出せる繊細でクリアな表示をします。それは何よりも、第2世代で強化された部分で、全域で解像が強烈に追求されています。それはMTF曲線図を見ても分かる通り、ほとんど単焦点に迫る勢いの解像とコントラストを叩き出しています。迷わず買って損はありません。仕事だろうと趣味だろうと、どんな用途においても、2021年ではこのレンズに並ぶものはないほどの画を叩き出してくれています。
色のりがいい理由はコントラストと書きましたが、この写真をご覧ください。明るい場所と暗い場所との差がきっちり出る場所。湿地帯を歩いていたら、いきなり池からモヤが出ました。せいぜい10秒くらいで、慌ててシャッターを切りましたが、撮れた画に惚れ惚れしました。こういう時、光のコントラストをうまく拾ってくれないレンズでは、暗い部分の階調性が感じられなく、デフォルメされた印象になってしまいます。でも暗い部分、特に木の舗装の色合いや奥の森の暗い緑が、ちゃんとそれぞれ出ているからこそ、モヤのふわっとした光が引き立ち、この場にいた時そのままの画が、レンズを通して定着されるのです。明るい部分が生きるのは、暗い部分の光と色をレンズがちゃんと拾って、しっかりと線を解像してくれるからなのです。
レンズの作例は、必ずしも劇的な瞬間でない方が、その実力がわかりやすいものです。特に曇りの日や太陽の光が落ちた後の写真を撮るときに、そのレンズの真価が現れます。この一枚は、日が落ちた後の八幡平を撮ったものですが、太陽もなく雲が空を覆い、わずかに地平線の下から回ってきている光が、ギリギリ目の前の雲を白に染めています。そんなコントラストの全くない状況ですが、手前から奥への色のグラデーションを是非見てください。特に奥の赤です。拡大すると、恐ろしく完全に捉えている木の枝と、上品に色づくさまざまな赤が写っているのです。実は僕は今回この一枚に、一番このレンズの真価を見たような気がしました。悪条件でも僕らは仕事をしなきゃいけない、そんな時にも不安なくこのレンズなら持っていける。そんな瞬間を捉えた一枚です。
28-75mm F2.8 G2で撮影した八幡平の絶景、いかがでしたでしょうか?この記事を通して僕は「写り」を全力で推しましたが、それを感じていただけたら幸いです。さて、写りばかり推してきた今回のレビューですが、もちろんそれ以外にも大きく改善したのがA Fです。例えば初代モデルでは、おそらくこのタイミングは捉えられなかっただろうなというのが、最後の一枚です。飛行機の着陸の写真ですが、フレームに入ってきた瞬間、驚くほどのスピードで飛行機を捉えてくれました。旅の終わりにふさわしい一枚としてお見せします。
それにしても、やっぱり軽い!しばらく重いレンズを使った後だったので、28-75mm F2.8 G2の軽さにはやはり心が浮き立ちました。結局最後は軽量であることを推しましたが、軽いは大正義です。でもね、今回はそれだけじゃない。その軽さからは想像もできないほどの強烈な画を出してくるレンズなのです。28-75mm F2.8 G2を、ぜひ皆さんに手に取って欲しいと思っています。