2021.09.30
写真家 鈴木 啓太 urban氏がタムロン28-75mm F2.8 G2 (Model A063)で魅せる、第2世代「G2」標準ズームの可能性
写真家 鈴木 啓太 urban氏がタムロン28-75mm F2.8 G2 (Model A063)で魅せる、第2世代「G2」標準ズームの可能性


こんにちは!日々家族との些細な日常を記録し続けている、写真家の鈴木 啓太|urbanです。もし、みなさんが使えるレンズがたった1本だけだとしたら何を選ぶでしょうか?写りが良いお気に入りの単焦点?重いけど広角から望遠まで使える便利ズーム?軽くてコンパクトなレンズもいいですよね。でも、軽くて単焦点並みに写りが良いズームレンズがあるとしたら…選んでみたくなりませんか?そんな誰もが選びたくなるようなズームレンズ、タムロン 28-75mm F/2.8 Di III VXD G2 (Model A063)が発売されることになりました。
ご存じの方も多いと思いますが、タムロンで最も人気のあるレンズのひとつ、28-75mm F/2.8 Di III RXD (Model A036)の第2世代「G2」となります。大幅にパワーアップした今回の28-75mm F2.8 G2。旅行に出かけたり、お友達や家族と遊んだり、約1か月間どこへ行くにもこのレンズだけを使いました。そして、気づいたこのレンズの秘密をお伝えしようと思います。
一枚目の写真 焦点距離:49mm 絞り:F/8 シャッタースピード:1/800秒 ISO感度:100 使用カメラ:ソニー α7R III
前ボケの美しさから背景ボケまで、全面に解像度の高さが見てとれます。子どもたちがパパとママへ駆け寄るワンシーンをあおりで撮影しました。F8と絞っていながらも、子どもたちや地面の草を前ボケにすることで画面に奥行きを出しています。子どもたちが通り過ぎるタイミングでシャッターを切り、パパママに早く会いたい!という気持ちを画面全体で表現。シャッタースピードを1/800秒に設定することで被写体ブレを抑えています。日常に潜むドラマティックなワンシーンにおいて、広角、望遠、標準域と咄嗟に表現を変えたいときに、ズームレンズはとても便利です。
初代28-75mm F2.8も不満がないほどの解像力を有していましたが、旅行などで風景を撮影した際、写真の周辺部がややぼやけたものになっていることが少し気になる点でした。第2世代「G2」の28-75mm F2.8ではMTF曲線図というレンズ性能を表す図からもわかるように、広角・望遠側どちらも大きく解像力が向上しています。オールマイティに使える標準ズームだからこそ日常利用はもちろん、旅行時の風景写真も高画質で撮れるようになったのは、大きな進化だと考えています。
解像力とトレードオフになるのがボケですが、タムロン特有のなだらかに溶けるボケは健在。むしろ解像力が上がった分、ピント解像面との差でボケがより美しく見えるようになったのは嬉しいポイントです。また、レンズを2枚追加し、大幅に性能を向上していながらも質量が軽くなっている点は特筆すべきだと感じます。
質量540gはペットボトル1本の重さとほぼ変わりません。僕たちファミリー層は子どものための荷物が多く、カメラに関する荷物はできる限り小さくまとめたいのですが、子どもとの大切な思い出もしっかり残したい。このレンズの軽さは撮影意欲と生活に必要な荷物とのバランスを両立させてくれます。
もちろん、フォトグラファーにとってもメリットで、旅行や登山などのシーンでもう1本レンズを追加することができるなど、レンズ選択における表現の柔軟性に応えてくれるのが魅力です。今回28-75mm F2.8 G2だけを持って旅行に行く機会がありましたが、単焦点特有の、撮影シーンが変わる度にレンズを交換する煩わしさから解放され、撮影に集中することができました。こういった目に見えない付加価値も、ズームレンズの持つ隠れた魅力であると再認識することができました。
四隅までの高い解像力、なだらかなボケ、発色の良さが垣間見える1枚です。カメラを始めたばかりのパパやママでもこのレンズがあればこういった写真が簡単に撮れます。
距離を置いて望遠側、開放F2.8で撮影することで、ズームレンズでも十分なボケを演出することができます。
旅行時に撮った一枚です。広角から望遠まで全域で初代28-75mm F2.8を優に超える解像度を持つ新しい28-75mm F2.8 G2。高画素カメラボディも相まって、撮影時の記憶を呼び覚ますほどのリアリティがあります。
同じく旅行時に、星空を撮影してみました。撮影予定にはなかったシチュエーションですが、万能なレンズは急な撮影シーンにも応えてくれます。F2.8の明るさがあれば天の川を写し出すこともでき、三脚がなくともカメラを地面において星空に向けて撮影するだけでもこの様な写真を撮ることができます。
もうひとつ大幅に性能が上がったポイントにAFがあります。初代28-75mm F2.8のAFも十分に高速です。しかし、より高価な純正レンズにはやや及ばず、コスト差を考えれば妥協せざるを得ないものでした。初代の28-75mm F2.8はステッピングモーターユニットであるRXDを搭載していましたが、第2世代の28-75mm F2.8 G2ではより高速かつ正確、そして静粛性に優れたリニアモーターフォーカス機構VXDに進化。
初めて使用したときの印象は、標準ズームのAFレイヤーがひとつ上にシフトしたと思えるほどに高速。遅いと感じる瞬間は全くなく、より正確になったAFは、ピント精度をより高い次元で求められる高画素機で使用したときにも、満足できる結果となりました。
我々ファミリー層にもおすすめしたい理由のひとつとして、このAF性能の高さ、そして静粛性が挙げられます。子どもは大きくなると縦横無尽に駆け回り、カメラやレンズの性能が高くないとピンボケ写真を量産してしまうのは日常茶飯事。28-75mm F2.8 G2は瞳AFの正確性も向上しており、AF-Cモードでのフォーカス追従性能は「撮りたい!」と思った瞬間により正確に応えてくれるようになりました。
ズーム機能やAFの静粛性も遊びやお絵かきに集中している子どもの大切な時間を邪魔せず撮影でき、望遠側75mmのわずか「5mm」も、更に一歩踏み込んで切り撮れる明確な強みです。α7シリーズの静音シャッター(サイレント撮影)と組み合わせることで、子どもの発表会や授業参観など、周囲に配慮しながら撮影できるのは、パパやママの撮影意欲に応えてくれるでしょう。
振り向き様の表情もご覧の通り。より高速化し正確になったAFが狙ったピントを確実にとらえます。寄りでもF4程度に絞ることで両目にピントを合わせることができるのは、人物写真を撮る際にも覚えておきたいテクニックです。
日常の中で咄嗟に起こる良いシーンも、ズーム機能と進化したAFが確実にとらえます。
瞳AFと連射を併用した1枚。スタンダード機のα7 IIIシリーズを使えばピント合焦率も高く、駆け回るようになった子どもでも、瞬間をバッチリとらえることができます。
家族で遊んでいる、動きのあるシーンでも大丈夫。1~2段絞ることで家族みんなにピントを合わせることができます。
大きく進化した解像度とAF性能ですが、進化したポイントはこれだけではありません。各種レンズともマクロ的な使い方にこだわりを感じるタムロンのレンズシリーズですが、十分に寄れる初代28-75mm F2.8よりもさらに寄れるのが第2世代28-75mm F2.8 G2です。最短撮影距離が1cm短くなったことで、最大撮影倍率は1:2.9から1:2.7に向上し、ハーフマクロの倍率 (1:2) により近づきました。
特に広角側ではレンズと被写体が触れるくらいに寄ることができます。子どもの小さな手や足を大きく写すことや、子どもが使う小さなおもちゃなども大きく写してあげることができるのは、子どもを持つ親世代にとっては嬉しいポイントです。広角側で寄ることで独特のパースがつきますので、ボケを最大限利用したい場合や歪みなく子どもを撮影したい場合は、望遠側75mmで最短撮影距離での撮影がおすすめです。その場合、開放F2.8を使うことで、F1.4程度の大口径単焦点レンズに匹敵するほど大きなボケが得られます。一方、ピントの合う面が浅くなってしまうため、F4~5.6程度まで絞ることで、ボケ量とピントが合った部分の美しさを両立させることができます。
ハード面での進化のポイントは、フォーカスセットボタンが搭載されたことです。フォーカスセットボタンはレンズ側面に配置されており、カメラ本体の機能を割り当てて使うことができます。例えば、瞳AFを設定して瞬時に振りむいた子どもにAFを合わせることや、AF/MFコントロールを設定することで最短撮影時にMFに切り替えピントを追い込むことがレンズ側で可能になります。これらの設定は、どちらもおすすめですので是非参考にしてみてください。
新たに開発された専用ソフトウェアの「TAMRON Lens Utility™」を使うことで、タムロン独自の機能をフォーカスセットボタンに割り当てることが可能になるなど拡張性も広がり、利用者に合ったカスタマイズができるようになりました。
広角側でググっと寄ってみた一枚です。これでもまだまだ撮影距離には余裕があり、最短撮影距離ともなると瞳と鼻を画面いっぱいにアップするまで近づくことができます。
雨の日、庭の柿を望遠側マニュアルでピントを合わせ、最短撮影距離0.38mでとらえました。子どものこぶしほどの小さな柿が、ここまで大きく写ります。柿の表面に沿うようにボケていく様と、全体を包む柔らかいボケはタムロンレンズならではと感じます。
こちらは広角側最短撮影距離0.18mでの撮影です。望遠側よりも大きく写し出すことができ、よりマクロ的な撮影が可能です。被写体に寄ることでピント面が非常に浅くなるため、F5.6~11程度まで絞り、手ブレしないシャッタースピードに設定、最後にISO感度で露出を調整するのがおすすめの撮影方法です。
子どもたちが集中しているときは、少し離れて見守っていたいもの。そんな時ズームレンズがあれば邪魔をせずに、子どもたちの成長を記録することができます。
初代28-75mm F2.8の弱点が改善され、大きな進化を遂げた第2世代28-75mm F2.8 G2。今回は友人家族を撮影しましたが、家族だんらんの妨げにならないよう配慮しながらも、日常をドラマティックに撮影できるのは、明るいズームレンズのメリットだと改めて感じました。この1本があれば十分で、そう思わせてくれるレンズであることは間違いありません。
カメラを始めたばかりの人やファミリー層にとって、ズームレンズはカメラにセットでついているレンズというイメージや、あまりボケなくてちょっと…と言う感想をお持ちの方が多いと思います。F2.8と言う明るさと高画質、そして540gと言う軽さはそんなズームレンズのイメージを払拭するのに十分すぎるほどの性能を持っています。
ボケや解像度を求めて単焦点レンズが欲しくなる方も多いと思いますが、28-75mm F2.8 G2を選択することで、ググっと寄った子どもの笑顔や駆け回る姿、パパやママから離れて成長している瞬間を余すところなく切り撮れます。パパママにとって、子どもを少し遠くから見守り記録できることは単焦点レンズにはない強みです。
日々の生活から旅行まで、子どもの笑顔や家族の写真を最高のもので記録したいというファミリー層にこそおすすめのレンズだと感じました。2018年発売の初代28-75mm F2.8から約3年、性能が大きく向上し、見た目にもより洗練された第2世代の28-75mm F/2.8 Di III VXD G2 (Model A063)。フォトグラファーは元より、我々ファミリー層にとっても新たなスタンダードズームレンズになると考えています。

Keita Suzuki 鈴木 啓太
家族写真&ポートレート写真家。カメラおよびレンズメーカーのセミナー講師をする傍ら、写真誌やwebコラムの連載などライターも手掛ける。また、都内近郊にて月2回100人規模のフィルムカメラワークショップ「フィルムさんぽ」を5年以上継続して行うなど、精力的に活動している。2021年自身初の著書となる「ポートレートのためのオールドレンズ入門」が玄光社より発刊された。