2021.03.27
写真家 別所 隆弘氏がタムロン28-200mm F2.8-5.6 (Model A071)など3本のレンズで切り取る小笠原諸島の風景
こんにちは、写真家の別所 隆弘です。今回、タムロンの最新レンズ3本、TAMRON 28-200mm F/2.8-5.6 Di III RXD (Model A071)、70-180mm F2.8 Di III VXD(Model A056)、17-70mm F/2.8 Di III-A VC RXD (Model B070)を持って小笠原諸島の父島を訪れ、エモさ爆発の写真をたくさん撮ることが出来ました。小笠原の紹介も含めて、3本のレンズで切り取った最高にご機嫌な光景を皆さんにお伝えしていきたいと思います。
今回チョイスした3本のレンズ、一見よくわからない選択に見えるかもしれません。超便利ズームの28-200mm、世間の評価が超高い70-180mm、そしてAPSC用の17-70mm。焦点距離は結構被っています。でもまず大事だったのは、この3本がめちゃくちゃ軽いということでした。小笠原へ行くには、船で24時間の旅を経なければならず、車や列車を使うことができません。必然的に荷物は軽くしなければなりません。でも、写真家としてはできる限りレンズやボディは持っていきたい。そういう必然順でレンズを選んでいった先に条件を満たすのが今回の3本なのです。これらのレンズはどれもクラス最軽量なので、荷物の総重量に対して負担が極めて小さいわけです。ただそれでも、例えば70-180mmは28-200mmと完全に被っていますが、もちろん意味があります。出発前に想定していた「これが必要になるタイミング」という目論見はバッチリうまくいきました。これについては実際の作例を見てもらうことにして、タムロンが近年進めてきた「レンズの軽量化」は、まさに旅しながら写真を撮るという小笠原での撮影に最高のパフォーマンスを発揮してくれました。そして「レンズチョイスの多様性」というのは、2020年代のキーワードになるはずだと思っています。
それでは、小笠原で撮ってきた作例、ぜひ見ていただきましょう!!ビバ小笠原!!
一枚目の写真( 焦点距離:17mm 絞り:F/6.3 シャッタースピード:1/1600秒 ISO感度:100 使用レンズ:17-70mm F2.8)
まずは17-70mm F2.8 (Model B070)で撮った小笠原らしい、スーパーな夕焼けを是非見てください!第二次世界大戦の末期に沈没した輸送船 濱江丸の遺構がそのまま残されていて、現地でも屈指のダイビング&夕焼けスポットです。ここの夕日が本当に美し過ぎて、滞在10日間の間に4回も訪れた場所なのですが、真正面に太陽を置いて、盛大に「天使の梯子」が出ている状態での、フレアやゴーストの無さにご注目。その上で、タムロンレンズらしい「青」の乗り方や、手前に飛び出している倒木の質感。この一枚に、レンズの良さがぎゅっと詰まった一枚となりました。画角も17mm(換算25mm)あるので、前景、中景、後景をきっちりと画角に収めた「風景写真」を撮ることができるのもポイントです。
70-180mm F2.8 (Model A056)でとらえた作品をご覧ください。百聞は一見にしかず、鯨の潜行の瞬間です!これが撮りたかったのです。しかも爆焼けの夕日をバックにしたこの一枚は、ここに連れて行ってくださった地元のガイドさんさえ「あんたたち運がいいねえ!」と絶賛してくれました。タムロンの70-180mm F2.8は、AFの正確さと速さがピカイチで、しかも軽い。外洋の荒い波に小さなクルーズ船で漕ぎ出した時、重量のある超望遠レンズだとおそらく抱えるのも危険だし、何よりほんの0.5秒くらいで海に入ってしまう鯨の尻尾を捉えるには重たいレンズは不利に違いないと判断して、この軽くて俊敏でかつ描写も最高の、近年のタムロンレンズの最高傑作を荷物に入れたのでした。このチョイスは大当たりでした!!
17-70mm F2.8 (Model B070)で撮影した1枚です。写真で一番重要な色表現は青だと思っています。なぜなら、空間の1/3、時にはこの写真のように1/2を空が占めたりするわけです。そこに加えて、海がメインの場所なら、画面の下半分も青!青が画面中に満ち溢れる空間になる時は、風景撮影では多々あります。そして空の青と、この極上のエメラルドブルーの海との対比も出したい、となると「青」や「蒼」や「碧」、全て違う「あお」を表現できるレンズがあれば、それはもう大勝利も同然なのです。タムロンのレンズを使っていると、その「青」の良さにたびたび助けられます。なお、写真の中に映っているスーパークールな女性は、クリエイティブコンサルタントの市川渚さん。よかったら彼女のYouTube、ぜひご覧ください。タムロンのレンズもよく使われています。
28-200mm F2.8-5.6 (Model A071)が大活躍するのは、「焦点距離が読めない時」です。それは一つ前の作品のようなメインの被写体に近づくことができない時だったり、あるいは複数の被写体のサイズが全然違う場合などで、「どのレンズを使おうかと迷ってる暇がない場面」です。この写真は、小笠原の名物となっている、「お見送り」のシーン。小笠原には1週間に一度だけの船便で新たな旅人たちがやってきますが、東京に向かって帰って行く時には、先に来ていた旅人たちが帰路につきます。彼らが父島を離れるとき、島の住民の方々が別の船に乗って「おがさわら丸」を追いかけていくのです!この感動の瞬間を見て小笠原を離れるのですが、一度見るともうここが故郷のように思えてきてしまいます。
28-200mm F2.8-5.6 (Model A071)の役割は、CP+2021のオンラインセミナーでもお話しした「レンズ構成の隙間を埋める」という点ですが、この作品はまさに「持っていてよかった!」と思えた一枚です。滞在の後半で、街の夜景を一枚も撮っていなかったということを思い出して、急遽山頂に車を走らせました。この時に持ち出したレンズは広角から望遠が一本で撮れる高倍率ズーム。僕のチョイスって、だいたい極端な方に触れがちなのですが、28-200mmが一本あれば、こんなふうに98mmなんていう予想もつかないながらも最適な画角で、夜景が丸っと切り取れるわけです。カバンに入れていて本当によかったと思えるレンズです。
というわけで、小笠原滞在で大活躍してくれたタムロンの3本のレンズ、いかがでしたでしょうか。特に今回70-180mm F2.8 (Model A056)をチョイスに入れたのは、大成功だったと鯨の写真を見るたびに思います。そして17-70mm F2.8 (Model B070)も28-200mm F2.8-5.6 (Model A071)も、まさに想定していた通りの働きをしてくれました。
そう、レンズというのは、多分一本で完結するものじゃないんです。どんなに便利で高性能なレンズも、どこかに弱点を抱えるものです。一本で全ての焦点域を兼ね備えた軽くて明るいレンズというのは、今のところ物理的に存在していません。であれば、2020年以降に大事になってくるのは、レンズ自体の性能もさることながら、撮影者に多様な選択肢を与えてくれるレンズの存在なのです。
SNSを中心に多様な表現が日々現れることになる2020年代においては、表現者ごとに必要になるレンズ構成は違ってきます。これまでのように「大三元あればなんとかなるね」という時代は、おそらくもう終わりを告げつつあります。そんな状況において、表現者の選択の「幅」を広げてくれるのが、今タムロンがさまざまな形で世に問うているレンズ群です。今回の3本のレンズは、まさにそんな2020年代を見据えたそれぞれの一本になっている、そう感じました。
記事で紹介された製品
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17-70mm F/2.8 Di III-A VC RXD b070(Model )
17-70mm F/2.8 Di III-A VC RXD (Model B070)は、APS-Cサイズミラーレス一眼用の大口径標準ズームレンズです。普段使いに最適な17-70mm (35mm判換算:25.5-105mm相当)、ズーム比4.1倍を実現。画面全域において高い解像性能を維持します。また、手ブレ補正機構VCの搭載や、静かで滑らかなAF、フォーカスブリージングを抑えて快適な動画撮影をサポートします。大口径F2.8の高画質を静止画と動画、双方の撮影で手軽に楽しめる実用性の高いレンズです。
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70-180mm F/2.8 Di III VXD a056(Model )
70-180mm F/2.8 Di III VXD (Model A056)は、ミラーレス専用設計の大口径望遠ズームレンズ。その最大の特長は、開放F2.8通しの高性能レンズでありながら、フィルター径Φ67mm、最大径Φ81mm、長さ149mm(70mm時)、重量810gという世界最小・最軽量ボディです。