2020.11.06
写真家 椎名 トモミ氏が新製品タムロン70-300mm F4.5-6.3 (Model A047)で撮る、生き生きとした子ども写真
私は仕事でもプライベートでもスナップを撮る機会が多いので、常日頃から「とにかく機材は軽くてコンパクトにしたい」と思っています。数年前まで大きな一眼レフを仕事用に使っていましたが、プライベート用に「小さくて写りのいいカメラ」を切望し、小型軽量のミラーレスが出るたびに買っては試すということを繰り返していました。そのため4種類のマウントのカメラを所持することになり、それぞれのマウントでレンズを揃えていたので防湿庫から機材があふれんばかりの状態になっていました。
当時、周りのカメラマンがどんどんソニーα7シリーズを使うようになっていました。小型軽量なフルサイズミラーレスであることに加え、人物の眼にピントを合わせる「瞳AF」が優秀だと聞いて、私も仕事用の機材を一気にソニー機に入れ替えたのです。カメラを「仕事用」「プライベート用」と使い分けることもなくなり、レンズもソニーEマウントに一本化できたので、防湿庫もすっきり!ですが、F2.8通しの望遠ズームレンズは大きくて重くて、なかなか使う気にはなれませんでした。
その後、タムロンから多くのソニーEマウント用のレンズが発表されました。まさに私の理想の「小さくて、軽くて、写りが良くて、リーズナブル!」なレンズばかり。その中でも28-75mm F2.8 (Model A036)、70-180mm F2.8 (Model A056)、28-200mm F2.8-5.6 (Model A071)は日々愛用しています。特に標準域をよく使う私にとって28-75mm F2.8 (Model A036)が一番のお気に入りで、普段はこのレンズをつけっぱなしにしています。
前置きが長くなりましたが、今回新しく発売されたTAMRON 70-300mm F/4.5-6.3 Di III RXD (Model A047)を使う機会を頂いて、今度はどんなレンズだろうとワクワクしました。実はこれまで、望遠ズームは重いので運動会や学芸会でしか使っていませんでした。しかし、70-300mm F4.5-6.3 (Model A047)は545gと従来の望遠ズームレンズより格段に軽くてコンパクト。これなら、普段から使えるかも!と思いました。
一枚目の写真( 焦点距離:300mm 絞り:F/6.3 シャッタースピード:1/1600秒 ISO感度:1000)
徒競走のゴールシーン。200mmではここまで大きく切り取ることはできないので、「300mmすごい!」と思った瞬間でした。
子どもが保育園の時は体育館で運動会をしていたため、それほど望遠は必要ありませんでした。しかし子どもが小学校にあがったら校庭が広くなり、運動会の時に70-200mmで撮影していて「もう少し望遠があったら」と思うシーンも多くなりました。それでも「さらに望遠のレンズを」とは思わなかったのは、最初に書いたように望遠ズームは重くて運動会や学芸会位でしか使わないため、これ以上は必要ないと思ったからです。
それではどうやって望遠が足りないシーンに対応していたかというと、200mmで撮影しトリミングで構図を整えていたのです。最近のカメラは画素数が多いのでその方法でも問題はなかったのですが、大量の写真をトリミングするのに時間がかかるのが難点でした。
今回、300mmのズームレンズを運動会で使ってみて、とにかくわが子を大きく撮れることに感動しました。徒競走のゴールシーンはもちろん、ダンスのような表現種目は遠くから撮らざるを得ない状況でしたが、300mmのおかげで子どもの生き生きとした表情を大きく写すことができました。また、レンズが軽いので、長い時間カメラを首から下げていても背中が痛くならなかったのも良かったです。
初めてサッカーの試合の撮影をしました。お友達のチームの練習試合だったのですが、ボールを追いかける子どもたちのフィールド内の位置によっては300mmでも足りないくらいでした。お友達のママは、キヤノンの一眼レフ(APS-C)にTAMRON SP 70-300mm F/4-5.6 Di VC USD (Model A030)で撮影していました。
このレンズはキヤノンのAPS-C機に付けると112-480mm相当になります。サッカーの写真はこれくらいの望遠があるといいのかもしれません。α7Ⅲと70-300mm F4.5-6.3 (Model A047)の組み合わせでクロップ機能を使用すれば105-450mmの超望遠になります。次回サッカーの試合を撮る機会があったら、クロップを試してみようと思いました。
絞り(F値)とピントの合う範囲(背景のボケ)の関係を学ぶと「背景をぼかすには開放F値の小さい単焦点レンズを使う」と思いがちです。また、「望遠(レンズのズーム)を使うのは、遠くにあるものを大きく撮るとき」と思っている方も多いでしょう。
実は、望遠レンズを使えば開放F値が小さくなくても大きな背景ボケが得られます。また遠くにいる子どもを大きく撮るというわけではなく、子どもの背景を大きくぼかすような写真を撮りたいときにも望遠レンズを使います。
今回は300mmの望遠で背景が大きくぼけたポートレートを撮影してみました。望遠は写せる範囲が狭いため背景の景色のきれいな部分だけを切り取って見せることができます。夕日の木漏れ日のシーンでは、大きな玉ボケがキラキラしてとても美しかったです。ワイド端の70mmでは、「その場所が分かる」程よいボケが得られました。
※300mmでお子さんの背景をぼかした写真を撮影するときには、お子さんから離れることになります。小さいお子さんを撮る場合は、どなたかがそばにいるか、車や自転車が通らない安全な場所で撮影してください。
しばらくの間70-300mm F4.5-6.3をカメラにつけたままで出かけましたが、常用レンズにしている28-75mm (Model A036)よりも少し軽いくらいなので、持ち歩く際に重さが気になることはありませんでした。とにかく機材を軽くしたい私にとっては、コンパクトで軽いというのがこのレンズの大きな魅力でした。
望遠レンズというと手ブレ補正機能の有無を気にされる方は多いと思います。このレンズには手ブレ補正機能は付いていませんが、α7Ⅲのボディ内手ブレ補正との組み合わせで手ブレを気にせず撮影できました。特に子ども写真を撮影する場合は、被写体ブレを防ぐためにある程度速いシャッタースピードで撮るため、手ブレ補正機能がなくても全く問題ありません。運動会を含め、すべての写真は一脚など使わず手持ちで撮影しています。
今回初めて300mmまでの望遠ズームを使いましたが、運動会やサッカーの試合のように遠くからしか撮れないシーンについては、望遠があればあるだけ活躍してくれることを実感しました。まだソニーEマウントのフルサイズ用の望遠ズームレンズを持っていない方がいたら、絶対に70-300mm F4.5-6.3 (Model A047)がおすすめです!普段から持ち歩けるサイズと重さ。気軽に持ち出して、望遠ズームの特徴を生かした撮影を楽しんでください。
Tomomi Shiina 椎名 トモミ
写真家・写真講師。1972年生まれ。 「カメラが苦手」という初心者(特に女性)に、カメラで写真を撮る楽しさを伝えたくて始めたレッスンの参加者は7 年間で延べ3000名を超え、2018年には日本実業出版社より「このとおりにやれば必ずキレイに写せる子ども写真の撮り方」を上梓。2020年3月には台湾で翻訳版も発売された。CP+2019フォトウィークエンドでは「旅スナップ術」と「ケーキの美味しい撮り方」セミナーを担当。何よりも旅が好きで、ヨーロッパの田舎町をカメラ片手に歩くのが至福の時。今一番のお気に入りの旅先はポルトガル。
記事で紹介された製品
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70-300mm F/4.5-6.3 Di III RXD a047(Model )
70-300mm F/4.5-6.3 Di III RXD (Model A047)は望遠撮影をより多くの方に楽しんでいただくために生まれました。幅広い望遠域をカバーしながらも、軽量・コンパクトサイズを実現。特殊硝材の採用により、色収差をはじめとした諸収差を抑制し、高画像と美しいボケ味が楽しめます。また、AF駆動には静粛性に優れた高速・精密なステッピングモーターユニットRXDを搭載。風景やスポーツ、鉄道、飛行機の他、ポートレートやスナップなど、手持ちで軽快に撮影を楽しみたいシーンでもその力を発揮します。