2020.10.30
写真家 別所 隆弘氏がお勧めする望遠ズーム タムロン70-300mm F4.5-6.3 (Model A047)。「その望遠、重さからの解放」
望遠レンズの作例依頼やレビューを頂くと、あの望遠独特の「見え方」を存分に見てもらう機会に腕がなると同時に、ほんのちょっと、憂鬱な気持ちになります。なぜなら、あの「鈍器」と錯覚するような重量物を持ち歩かねばならないのだから!鈍器、そうあれはまさに鈍器。大抵の超望遠と呼ばれるレンズは、少なく見積もっても1キロオーバー。40代に入って以降、謎の凝りに全身を悩まされているこの身に、1キロオーバーのレンズは正直つらく感じる様になりました。始めに「ほんのちょっと、憂鬱な気持ち」と書きましたが、実際相当憂鬱だし、お世話になっているタムロンさんでも断っちゃおうかな… とか、ほんのわずかに思ったくらいです。ところがおもむろにスペックシートを見て、驚きました。重量:545グラム!!??マジか!
というわけで、相変わらず重量に関して業界の常識を破るタムロンの望遠ズーム、TAMRON 70-300mm F/4.5-6.3 Di III RXD (Model A047)がついに登場。「でも驚くほど軽いということは、それだけ光学的に無理しているのでは?」と言いたくなりますよね。それでは実写をご覧ください。百聞は一見に如かず。
一枚目の写真( 焦点距離:300mm 絞り:F/6.3 シャッタースピード:2秒 ISO感度:100)
望遠のレビューでは、大抵はまず飛行機を撮影してみます。作例写真として色々よくわかるので、まずは飛行機長秒夜景をご覧ください。手前の独特の光の「割れかた」は、これは空港特有の現象です。見てもらいたいのは、中央に鎮座する飛行機のサイズと解像感、そして画面奥の宝塚の夜景の綺麗なボケかた。望遠レンズの魅力凝縮ですよね。遠いところのものを、ギュッと手元に持ってきて画角にまとめあげる。開放で撮影しているのですが、解像とボケの両立が300mmのテレ端でしっかり出ています。実に美しい。
自分はだいたい風景写真家という認識を持っていただいているのですが、このレンズでは人物も撮りたくなります。ボケが綺麗で、しっかり暗部でも色を拾ってくれるのです。そこで、夕焼けが煌く極上タイミングの大学キャンパスで撮ってきました。巨大なコンクリート壁に写っている盛大なボケが美しいのですが、実はここまで強烈な光だと、今度は心配になるのは暗部でのA Fの正確さ。もちろんこれはボディ側の性能との掛け算になりますが、直視できないほど強烈な光により作られた濃い影の中でも、モデルさんの目にガッツリとフォーカスを当ててくれています。そうなると、解像感もしっかり出るので、ボケが引き立つという寸法。本当にこれ、545gのレンズ?というくらい隙のないレンズです。
というわけで、ついに望遠さえも重力から解放したタムロン渾身の「新しい望遠」による作例、いかがだったでしょうか。冒頭で重たい望遠レンズを持つことの憂鬱な気持ちを綴りましたが、1キロを超えるレンズの作例作りとなると、撮影が終わって帰ってくると、やはりくたくたになります。丸一日、ボディと合わせて1.5キロの物体を持ってうろつくわけですから、相当な負担になります。望遠は特にサイズ感も大きくフロントヘビーなので、その疲れはより一層増します。でもこのタムロン70-300mm F/4.5-6.3 Di III RXD (Model A047)は、そうした重さから我々を解放してくれる一本です。そう、翼を授けてくれます。体に、そして何より、想像力に。
70mmという標準域最後の焦点距離から始まり、超望遠の入り口とも言える300mmまでをこなすという、ユーティリティに溢れた焦点距離にもかかわらず、振り回していても手に持って移動しても、感じるのは圧倒的な軽やかさ。そしてそこから生まれる上質な画。タムロンの最近の傾向の全てが詰まったこのレンズは、望遠入門の一本として、全力でお勧めしたくなるレンズです。
記事で紹介された製品
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70-300mm F/4.5-6.3 Di III RXD a047(Model )
70-300mm F/4.5-6.3 Di III RXD (Model A047)は望遠撮影をより多くの方に楽しんでいただくために生まれました。幅広い望遠域をカバーしながらも、軽量・コンパクトサイズを実現。特殊硝材の採用により、色収差をはじめとした諸収差を抑制し、高画像と美しいボケ味が楽しめます。また、AF駆動には静粛性に優れた高速・精密なステッピングモーターユニットRXDを搭載。風景やスポーツ、鉄道、飛行機の他、ポートレートやスナップなど、手持ちで軽快に撮影を楽しみたいシーンでもその力を発揮します。