2020.07.08
鉄道写真家 杉山 慧氏がフルサイズミラーレス用大口径望遠ズームレンズ タムロン70-180mm F2.8 (Model A056)で鉄道写真を撮る
鉄道写真家 杉山 慧氏がフルサイズミラーレス用大口径望遠ズームレンズ タムロン70-180mm F2.8 (Model A056)で鉄道写真を撮る
鉄道写真家の杉山 慧です。今年も「第2回 タムロン鉄道風景Instagram コンテスト 2020」で審査員を務めさせていただくことになりました。皆様からのご応募をお待ちしております。
さて、ミラーレス専用設計のソニーEマウント用大口径ズームレンズ TAMRON 70-180mm F2.8 Di III VXD(Model A056)がタムロンから登場しました。私はこの焦点距離を鉄道写真でよく使いますが、このレンズは大口径F2.8通しでありながら、質量810gに抑えられています。カメラとあわせても約1460g(α7Ⅲ、バッテリーとメモリーカードの質量を含む)で、フラッグシップモデルの一眼レフカメラ本体と同等の質量なのだから驚きです。
一枚目の写真 焦点距離:180mm 絞り:F/5.6 シャッタースピード:1/2000秒 ISO感度:400
今年3月にデビューした話題の新型近鉄特急「ひのとり」です。艶のある優美な車体に周囲の景色を映しながら名阪間を約2時間で結んでいます。70-180mm F2.8は車体のメタリックレッドを正確に描き出してくれました。このレンズは開放F2.8通しで絞り値の選択肢が多く、幅広い表現ができます。車両の先頭部分と前後数メートルの範囲にピントが合うよう、F5.6で撮影しました。このように望遠で編成写真を撮影する際によく使うF5.6の絞り値で、車両の「顔」を引き立たせる背景の美しいボケ味が得られるのは、F2.8通しレンズならではの「余裕」と言えるでしょう。
「軽いは強い!」これがこのレンズを使ってみた感想です。先述の軽さゆえに、三脚に載せても手持ちでも構図が組みやすく、流し撮りをするときも思い通りに動かせました。もちろん、軽さだけでなく、写り(コントラストや発色)の良さやオートフォーカスなど、鉄道写真における様々な撮影方法を試みました。
はじめに訪れた近畿日本鉄道は、先ほどご紹介した「ひのとり」が登場したことで、特急列車陣営に変化が訪れています。過渡期の鉄道は実に面白いです。個性豊かな特急列車たちを、レンズとカメラの性能を最大限に活かして捉えました。
また、このレンズは軽量かつコンパクトでありながら、大口径望遠ズームで絞り開放値がF2.8通しであることが特徴です。特別企画として別途、小湊鐵道で全ての作例をF2.8で撮影してみましたので、是非最後まで御覧下さい。
上記までの作例は全てマニュアル(MF)でピントを合わせていましたが、ここでタムロン初搭載のリニアモーターフォーカス機構「VXD (Voice-coil eXtreme-torque Drive)」によるオートフォーカス(AF)を試してみます。まずは列車が正面を向く構図です。被写体に選んだ「しまかぜ」はガラスが大きく、どのタイミングなら架線柱などの障害物が写り込まないか、列車が来てみないとわかりません。要するに事前にMFでピントを合わせることができないので、信頼できるAFが必要になるわけです。AF-Cに設定の上、フォーカスエリアをフレキシブルスポットで列車の鼻先にセット。「VXD」によるAFは音もなく一瞬でピントをあわせてくれ、前後のカットも正確にピントが合っていました。
今回、近鉄特急と小湊鐵道を撮影したTAMRON 70-180mm F/2.8 Di III VXD (Model A056)。一番の強みである軽量でコンパクトなレンズであることを実感できました。構図の組みやすさや、流し撮りのしやすさなど、気持ちよい使い心地でした。使いやすさだけでなく、写真の仕上がりも見事で、正確な発色をしてくれるのはもちろん、フルサイズカメラの醍醐味であるボケ味も、大口径望遠ズームでF2.8通しを実現しているからこそ思う存分楽しめました。私はこれほどF2.8に拘って撮影したことが過去にありませんでしたが、このレンズが持つ美しいボケ味に出会えたことで今後は積極的にF2.8を使いたいと思いました。タムロン初搭載のリニアモーターフォーカス機構「VXD」によるAFは俊敏かつ正確な信頼度の高いもので、咄嗟の撮影や、連写の際に様々なシャッターチャンスでピントを合わせたいときも安心して使えました。静粛性も見事でAFの動作音を思い出せないくらい、静かに動いてくれました。軽いので、他のタムロンレンズをたくさん持って行っても気持ちよく撮影ができそうです。
Satoru Sugiyama 杉山 慧
1992年静岡県生まれ。日本大学芸術学部写真学科を卒業後、ネコ・パブリッシング「レイル・マガジン」編集部で、編集経験を積んだのち、鉄道写真事務所レイルマンフォトオフィスに入社。同社を2018年に独立した後は、編集・カメラマン経験を活かし、写真撮影のみならず文章の執筆も一手に引き受ける「二刀流カメラマン」として活躍中。2019年には初の個展となる「走れ! グリーンストライプ! 特急『踊り子』号」写真展を開催。 【写真撮影/本文執筆記事】 ・「鉄道ジャーナル644号」三世代が走る伊豆の『踊り子』 Saphir ODORIKO E261,E257,185(鉄道ジャーナル社) ・「鉄道写真の奥義(Motor Magazine Mook)」珠玉の絶景 鉄道撮影地ガイド50選(モーターマガジン社) ・「お立ち台通信vol.22」メインライン/東海道本線 撮影地ガイド(ネコ・パブリッシング) ほか多数