2020.03.30
デザイナー 吉竹 遼氏がタムロン35mm F2.8 (Model F053)で撮る京都・舞鶴
みなさま、初めまして。吉竹遼と申します。ふだんはスマートフォンアプリやウェブサービスのUI / UXデザインの仕事をしている傍ら、写真撮影を楽しんでおります。レンズのレビューということでフォトグラファーからの寄稿がほとんどのTAMRON MAGでは異質かもしれませんが、新しい視点をお届けできましたら幸いです。
さて、今回お借りしたレンズはTAMRON 35mm F/2.8 Di III OSD M1:2 (Model F053)。ハーフマクロも撮れる単焦点として、20mm (Model F050)と24mm (Model F051)と合わせて三兄弟の愛称で呼ばれる事もあるようです。ちょうど京都に行く予定があったので、ソニーα7R IIIに装着して一緒にお出掛けしました。
一枚目の写真( 焦点距離:35mm 絞り:F/2.8 シャッタースピード:1/640秒 ISO感度:200)
レンズ特性を活かした寄りの一枚。気になる被写体を見つけたら、そのまま近付いて撮れるのがハーフマクロのいいところ。
……と、ここまで35mmという焦点距離を扱ってみたわけですが、ふと、撮影しているときの体の動かし方が、ふだんとは異なることに気が付きました。あ、これは自分の目と身体の延長線上の動きだ、と。
85mm~200mm付近の焦点距離を好む自分にとって、レンズは身体の拡張に近い感覚です。自分の目では捉えられない光景を写してくれる道具。魚眼レンズや高倍率マクロレンズにも同じ感覚が当てはまります。
一方、35mmは人間の視野角に近い焦点距離です。しかもこのレンズ35mm F2.8はハーフマクロですから、目の前に広がる景色をぼうっと眺めたり、かと思えば気になる被写体にぐいっと近づいたりといった、日常生活の中で何気なくおこなっている身体動作に撮影を重ねることができます。
思い返すと、単焦点レンズの扱いにおいて「足で稼ぐ」とよく言われますが、あれはフレーミングだけではなく身体感覚も含めた話かもしれないな、と自分なりに合点がいきました。
単焦点、特に広角~標準域のレンズは、近年のスマートフォンのカメラ性能の向上によってこれまで以上に存在意義が求められている……なんて話は、ここで改めて書かなくても多くの方が感じているのではないかと思います。いわゆる「スマホで十分」とどう共生するか・できるか、という話ですね。
単にスペックを押し出すだけでは、スマートフォンユーザーには「でもカメラは高いし重い」と思われてしまうし、カメラユーザーには「スマホでも代替できる」と思われてしまう。難しい焦点距離だと感じます。
だからこそメーカーはプロダクトに物語を込めて伝える努力が必要で、ユーザーはそれを受け取り自分にフィットする製品かどうか(=これは私のためのものなのか?)を見極めることになります。
改めて35mm F2.8の製品ページを眺めてみると、「いつもの日常に、新たな発見を」「このレンズから、発見にあふれる毎日が始まります」といった言葉が並んでいることに気が付きます。
これはまさに、今回の旅において、自分が35mmとの関係性を探る試みの過程で体験したことと重なります。
「表現」以上に「発見」を語るレンズ。TAMRON 35mm F/2.8 Di III OSD M1:2 (Model F053) は、スペックシートだけでは見えてこない体験に出会いたい方のための、良き1本となるでしょう。