2018.01.01
ワンショット劇場 私の選んだ「このシーン×この焦点域」
初めてフランスを訪れたのは、まだ充分に肌寒い三月だった。憧れの土地へ足を踏み入れた自分にとって、多くの写真家に撮り尽くされたPARISを自らの物にすることができるのかという緊張と、興奮とが入り交じった撮影の旅であったことを思い出す。
今回、再びフランスへ。季節は短い夏を終えようとしていた。新たに手にしたタムロン18-200mm F/3.5-6.3 Di III VC(B011)をカメラに装着し、Tシャツ姿で通りを歩く。軽快だ。余裕は出会いを大きく変えてくれる。魅力的な建造物が建ち並ぶ街。興味は、教会、美術館、ショーウィンドウなど、人の手によって造られたものへ注がれる。
空の表情は刻々と変わり、突然降り出す雨によって道も壁の色調も一変する。これもある意味、好都合である。写真は、誰かと同じでは意味がない。気づけば空には、必ずといっていいほど飛行機雲がある。これも人により描かれているのだ。
若い頃からフランスという国へ強い関心を抱いてきたのは、ここで生み出された写真、絵画、建築といった、さまざまな芸術が、自分にとって強い影響を与え続けたからだ。それは、現在も変わらない。
Eiji Yuzawa 湯沢 英治
1966年、横浜市生まれ。独学で撮影技術を学ぶ。広告、雑誌の分野で実績を積むかたわら、普遍的な事物をモティーフとした作品を撮り続け、個展も多数開催している。 表現の一環として2006年より動物の骨格標本の撮影を始め、2008年6月には初の写真集となる『BONES-動物の骨格と機能美』(早川書房刊)を出版。これがアートと生物学双方の観点から話題となって多くの新聞・雑誌で高い評価を得、2009年3月には渋谷PARCO LOGOS GALLERY(東京)にて「BONES?湯沢英治写真展」を開催。2009年5月には財団法人三宅一生デザイン文化財団 21_21DESIGN SIGHT 第5回企画展、山中俊治ディレクション「骨」に参加。2011年2月には、2冊目の写真集『BAROCCO-骨の造形美』(新潮社)を出版。2011年には、ニューヨーク写真誌『pdn』12月号で「BAROCCO」を紹介される。今回、タムロン18-200mm(B011)カタログ写真を撮影。