2021.08.25
「第3回 タムロン鉄道風景Instagramコンテスト 2021」結果発表
「第3回 タムロン鉄道風景Instagramコンテスト 2021」結果発表
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遠藤 真人 Endo Masato
日本大学芸術学部 写真学科卒業 フリーランスカメラマン。鉄道会社公式撮影からWEB連載、コンテスト審査員など活動は多岐にわたる。蒸機の美姿を追い求めた「煙道」には根強いファンも多い。
2020年には初写真集「いすみ鉄道 キハ 52-125 写真集 Izumi Pride Vol.1」を出版。アマチュア時代には「タムロン鉄道風景コンテスト」に二度の受賞を果たす。日本写真学会正会員、EIZO ColorEdgeAmbassador
【写真家サイト】
HP:https://masato-endo498.tumblr.com
Twitter:https://twitter.com/masato_endo498
Instagram:https://www.instagram.com/masato.1989/
審査員の遠藤 真人です。このたびは沢山のご応募をいただきありがとうございました。ご参加の皆様に心から感謝いたします。昨年から誰にとっても思うようにならない出来事が増えました。いま葛藤を抱えている方も多いと思います。そのような時こそ誰かと心がふれあう、希望を感じる作品に出会いたいと願うものです。今回は膨大な作品の中から、心が通じあう瞬間を捉えた作品を中心に選出させていただきました。
作者と「被写体」。作者と「情景」。作者と「鑑賞者」。
写真は両者をしっかりと結び付ける糸。それぞれのこだわりが愛情として作品に表れました。
応募総点数(「#タム鉄フォトコン」のタグを付けて投稿された数)約9,000点もの規模の鉄道写真コンテストに相応しく、ご応募いただいた作品はハイレベルなものばかり。作品を拝見しているとストレートな鉄道写真が多く、王道をゆくコンテストだと痛感しました。そこで今回はもう一歩踏み込んだ領域で評価をさせていただきました。鉄道の魅力と写真の魅力、その二つが交ざりあい、高い完成度を作り上げた作品を選びました。流れ過ぎるタイムラインの中で、キラリと光るセンスを感じるものに賞を贈ります。特に上位入賞作品はみなさんに見ていただきたいものばかりです。
「ひょっとして面白いかも!」
「すごいのが撮れた!」
「これしかない!」
写真には偶然も大切な要素です。
そして、写真はレンズを通して生まれる芸術です。
エントリーいただいた全作品へ拍手を送ります。
素晴らしい作品をありがとうございました。
大賞は希少となった115系を面白い視点で捉えた作品です。数ある投稿の中でも、この作品は心に残る一枚でした。
最新の撮影機材は高性能化が進みました。いまの時代は誰でも気軽にシャッターを押せば、それなりに綺麗に写ります。ですが、このような写真は簡単に撮れません。なぜならば、画面一杯に被写体を捉えるには、それなりの経験と覚悟が必要だからです。
こちらの作品は寒さをテーマとして、電車をフレームアウトかつアウトフォーカスで表現しています。車両は停車中のようですが、作者は「瞬間」を意識してシャッターを押しています。緊張感と迫力を感じます。作者の意図が明確であり計算されています。たまたま撮れた作品とは対局のじっくりと狙いを定めるスナイパーのような強かさを感じる迫真の作品です。作者も寒い中でよくこの瞬間を捉えました。写真を仕上げるときに安直に寒色系を使っていない点も高評価です。大賞おめでとうございます。
とてもハイレベルに仕上がっている作品です。まずはサイドの流し撮りを縦位置の構図で狙ったところから、他者とは圧倒的に違う個性を感じさせます。本数が多いといえど、高速の列車を一両分の隙間に収めたセンスと技術は只者ではありません。絶対に表現したいという意志を感じます。一度や二度の撮影ではなくて何度もトライしたのだろうな…。と勝手に想像してしまうほどです。見るほどに味わい深くなります。列車の下からも空が見える場所を選んで大正解です。影の部分が流れているため躍動感を引き立てています。空も上品に落ち着いたトーンです。
最近は「私は鉄道ファンです」というと「乗り鉄ですか、撮り鉄ですか?」と聞かれる機会が増えました。鉄道趣味が認知されていなかった昔と比べると、驚きの世の中になりました。この作品はそのような「乗り鉄」や「撮り鉄」のような単一のジャンルを超越した、車窓風景写真ともいえる作品です。車窓風景はまさに乗り鉄の世界ですが、狙った瞬間に写真的センスを感じます。さらに開閉扉の小窓から狙った視点は鉄道ファンならでは。さりげない吊り手も憎い役者ですね。作者はかなりツボを心得ている方なのでしょう。新たな魅力が詰まった作品です。
鉄道写真として類を見ない不思議な作品です。左右のシンメトリー構図に割って入るスマートフォン。まるで現代の写真観を体現したような作品です。好奇心が作品から溢れ出ています。手が逆さなのは、きっと列車のライトが隠れないように工夫した結果なのでしょう。完成度が高く不思議な世界を見ているようです。スマートフォンの画面内が適正露出なのもいいですね。見せたいものに自然と視線が向かいます。反射が少ないのは特別な工夫をしているのでしょうか。よく考え、一生懸命撮っている姿が目に浮かびます。とても気に入った作品です。
柱から身を出した子ども。どこまで偶然かわかりませんが、同じく架線柱から身を出した電車。この両者が不思議なシンクロニシティを生み出しています。絶妙なシャッタータイミングのおかげで、子どもと電車が対等な関係のように表現されています。私が見てきた写真では、鉄道は常に「憧れの存在」であり、そこに上下関係のようなものがうかがえました。しかし、ここでは電車がまるで同年の友達のようにフランクに表現されています。ひょっとするとこれが忘れてしまった童心の正体かもしれません。そして遠くから注ぐ眼差しを、大口径ズームレンズで繊細に表現したセンスに敬服です。