2019.08.08
「タムロン鉄道風景Instagramコンテスト 2019」結果発表
「タムロン鉄道風景Instagramコンテスト 2019」結果発表
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鉄道写真の楽しさを広げる活動の一環として、今年初開催となりましたInstagram限定のハッシュタグフォトコンテスト「タムロン鉄道風景Instagramコンテスト 2019」の審査結果を発表いたします。
鉄道写真家の杉山 慧(すぎやま さとる)氏を審査員にお迎えし、応募総点数(「#タム鉄フォトコン」のタグを付けて投稿された数) 9,737点の中から大賞1名、準大賞3名、入選15名、タムロン賞1名の全入賞作品20点をご覧ください。
今回初めて開催された「タムロン鉄道風景Instagramコンテスト 2019」。プリントによる従来の応募方法ではなく、写真共有アプリ「Instagram」で投稿するフォトコンテストです。作品には「#タム鉄フォトコン」というハッシュタグがついているため、リアルタイムで投稿の状況を誰でも見ることができ、個々の作品にコメントやいいね!といったリアクションを起こせることが斬新で、投稿が投稿を呼ぶことになり、最終的に「#タム鉄フォトコン」で投稿された作品点数は9,737点にものぼりました。私たちの予想を大きく上回る数にまで達し、大変嬉しく思っています。
近年はSNS、とりわけInstagramの普及により、顔見知りの範囲のみならず、誰でも自分の写真を世界中にすぐに発信できるようになりました。公共性が高く身近な乗り物である鉄道の写真は誰にでも「インスタ映え」の瞬間を撮れるチャンスがあります。スマートフォンによる優れた作品もたくさん応募があったことは、鉄道写真がより多くの人に受け入れられるようになったことの表れでしょう。今回は、そうしたインスタ映えの瞬間を捉えた作品のなかから、ストーリーを感じられるものや、色彩の美しいものを選びました。
ぜひ次回も、今回以上の盛り上がりが見られることを期待しております。
子供の表情や声といった、はしゃぐ様子がストレートに伝わってきました。これは鉄道博物館で展示されている400系ですが、大胆に車両下部のみを切り取ったことで、子供の視点で見た新幹線の大きさや憧れが上手に表現できています。絶妙なシャッタースピードで子供をブラしたことで、これから成長していく子供の「動」、役目を終えて彼らを見守る新幹線の「静」という対比を作り出しています。モノクロにしたことで情報量を減らし、簡潔にまとめることにも成功しています。さて、400系新幹線が引退したのは平成22年ですが、現役当時を知る大人も、知らない子供も、令和の時代にこうして実物を見ることができます。ずっと大切に保存していくことの大切さを、決して説明的にならずに教えてくれる1枚です。
E2系新幹線が陸送される、とても珍しい場面です。水面に綺麗に反射している光景を見たとき、作者の方も驚いたのではないでしょうか。そうした心境で、このように落ち着いて構図を決めてシャッターを切ることは、なかなか真似できることではありません。黒い背景に派手な色のトレーラーヘッドと白いボディのE2系が見事に浮かび上がり、停まっていることに力強さを感じます。水鏡を利用した作品は度々見られますが、この作品ではE2系が歩んできた今までの世界と、これから迎える世界の2つを表していると捉えることもでき、意味のある作品に仕上げています。
まさに「インスタ映え」の領域を越えている作品です。これは鳥取県を走っていた倉吉線の廃線です。廃線跡を捉えた作品は他にも多くの方が応募されましたが、この作品の面白いところは、手前に今にも線路に被さりそうな太い木を配し、線路が続く奥行きを作ることで列車が走っていた当時を想像させておきながら、奥にある線路の中央に生えた細い木が視線を遮り、ここが廃線であるという現実を強烈に突きつけていることです。手前から奥に向かって暗→明→暗→明と明るさが交互に変わっていることも奥行きのある絵作りに役立っています。
「被写体全てが役者だな」と見た瞬間に思いました。まず目が行く左手前の二人は下を向いて歩いていながら、後ろの人物が傘をさしていることで、激しい雨が降っていることがわかります。車掌さんが車内の灯りにうかびあがり、指で何かを確認していることから、じきに発車することが伺えます。私たちが雨の駅を想像した際に、思い浮かべるシーンを形にしたと言えますが、写真にするのは容易ではなく、その瞬間まで長時間待つ忍耐力か、すぐにそうした瞬間を呼び寄せる強運がなければ成り立ちません。調和の取れた構図や夜間の難しい露出あわせといった技術力も備わっていると言えます。
新橋駅にあるステンドグラスと人の後ろ姿を捉えた、鮮やかな作品です。日本で初めて鉄道が走り始めた新橋は鉄道の聖地で、現代では日本有数のオフィス街になりました。明治時代、近代化に貢献した1号蒸気機関車と、現代の日本を支えるサラリーマンの向き合う構図が、お互いの持つ使命を称えているように感じ取れます。作者の方はきっと、絵になる背格好の人が絶妙な位置を通るまで、粘り強く待ったのでしょう。タムロンレンズのもつ強みである、周辺部まで明るくムラのない描写や自然なボケ味も作品の美しさに貢献しています。