遠赤外線レンズで、新たな世界を切り開く
「光を究め、感動と安心を創造し、心豊かな社会の実現に貢献します」を、経営理念に定めるタムロン。安全を守る力となる社会の眼は、一般的なカメラの枠組みや、人間の眼で見る領域にとどまるものではない。セキュリティの領域でも積極的に製品を展開し、リードしてきたタムロンは、すでに近赤外線対応レンズで、眼に見えない領域での実績を持つ。そこからさらに、遠赤外線レンズに参入することは、必然的な選択だ。そして、参入するからには、タムロンでなければできないことを実現しなければ意味がない。これまでのさまざまな製品開発で培ったノウハウを惜しみなく投入し、可視レンズと同等のクオリティと使い勝手を追求していく。タムロンにとって遠赤外線レンズとは、けっして特殊な領域ではなく、最新技術と独自技術によって切り開く未来のひとつなのである。
遠赤外線カメラがとらえる映像
光を電磁波としてとらえると、380から780ナノメートルの波長帯が、人間の眼が感じる可視光の領域となる。遠赤外線カメラが扱う領域は8から14ミクロン(8,000から14,000ナノメートル)で、温度との相関性が高い。つまり、物体が発している熱を検知して、温度差を映像化するのが、遠赤外線カメラの役割となる。具体的には、暗闇のなかでの侵入監視、火災の煙のなかでの人体検知など、人間の眼では見えないさまざまな状況が、遠赤外線が活躍する場面だ。
高品質と効率性の両立
一般的な透過ガラスは遠赤外線をとおさないので遠赤外線レンズには適さない。遠赤外線波長の透過率が高いゲルマニウムが理想的だが、高価かつ価格変動が大きく、加工も難しい。そこで、金属物質を合成したカルコゲナイドといった代替素材も活用する必要が生じる。ゲルマニウムと違って、成形加工ができるカルコゲナイドは、タムロンが培ってきた加工技術を最大限に生かせる素材でもある。設計、生産技術、製造が連携し、需要に応じた素材の組み合わせを探り、バランスよく製品化していくことが重要だ。
妥協を許さない、遠赤外線レンズの検査工程
遠赤外線レンズは透過ガラスではないので、自社で開発・改造した機器を用いた、特殊な検査が必要になってくる。また、可視レンズのような微調整ができないので、遠赤外線レンズのMTF(解像度を数値化した指標)を作り出す画像処理技術を使い、ソフト的にチューニングする独自の方法で品質を高めている。一般的に遠赤外線レンズは、必ずしも高画素・高画質を追求する分野ではないが、特殊な検査やチューニングには、そこに妥協せず、可視レンズと同等のクオリティと使い勝手を追求していくタムロンの姿勢があらわれている。
タムロンの技術力が注ぎ込まれた遠赤外線レンズ
広角側で検知したら、ズームして、望遠側で認識する。ズームレンズなら、一台で効率的な監視ができる。タムロンでは、可視レンズで培ってきた独自のズーム技術を活かし、画期的な遠赤外ズームのレンズ構成を実現した。遠赤外線レンズは、その材料特性上、環境の温度変化に影響されやすい。このため、ズーミングとフォーカシングのコントロールがきわめて困難であった。これは、遠赤外線市場で単焦点レンズが主流となっている要因の一つである。そこで、タムロンは、温度影響を内蔵回路により自動補正するアクティブ・アサーマル機構などによって、この問題を解決し、遠赤外ズームを生産、高精度なズーミングとフォーカシングで、可視レンズに匹敵するような使い勝手を実現している。
未来に貢献する技術力
遠赤外レンズとしては世界初の光学防振機構を搭載するなど、遠赤外用ズームレンズには、タムロンならではのさまざまなノウハウが投入されている。主流となっている仕様のスクリューマウントを採用、さらに、一般的なレンズ制御の通信方式に対応させることによって、汎用性を高めている。特殊だと思われていた領域を、最新技術と独自技術によって、より身近なものにし、未来に貢献する。タムロンにとって遠赤外線レンズとは、そうしたビジョンにチャレンジする場でもあるのだ。