大口径XGMが、高性能レンズを具現化する
非球面レンズは、技術者にとっても、ユーザーにとっても、夢をかなえてくれるデバイス。歪曲収差や球面収差などを抑制し、解像性能を高めるだけでなく、コンパクト化にも大きな効果がある。研削での製造はコストがかかり、大量生産には不向きであったが、熱で柔らかくしたガラスを精密金型でプレスするガラスモールド方式によって、大量生産が可能になった。これまで難しかった、ガラスモールドによる、55ミリを超える大口径の生産を可能にした画期的な技術が、タムロンのXGM(eXpanded Glass Molded Aspherical:大口径ガラスモールド両面非球面)。明るい開放F値という夢を実現する大口径、高い解像性能という夢を実現する非球面レンズ。この2つの夢が出会い、より身近でコンパクトな高性能レンズに結実するためのイノベーション、それがXGMなのである。
XGMに秘められた、タムロン独自のノウハウ
モールドとは、成形という意味。600℃から700℃の高温に加熱したガラスを、金型でプレス加工し、500度近傍まで徐冷する。レンズの口径が大きいXGMでは、通常のプロセスの数倍時間がかかるので、安定した製造が難しくなってくる。理論上のシミュレーションだけでなく、トライ&エラーの積み重ねによって導き出されたガラスモールド製造プロセスには、タムロン独自のノウハウが詰まっている。
理想のレンズ実現に向け、繰り返された試行錯誤
既成の成形機を使っていては、これまでにあるレンズしか作れない。自分たちが目指す夢のレンズ、理想のレンズを実現するために、成形機をカスタマイズするのは、必然だ。成形機を制御するためのプログラムも、当然自分たちで組む。ハードウェアと加工プログラム、その両方をコントロールしているからこそ、さまざまな問題に柔軟に対応し、ときには成形機自体を改造しつつ、より完璧な製品へと近づいていくことができる。
設計、生産技術、製造のチームワーク
どのような革新的な技術でも、量産できなければ、より多くのユーザーの手元に届くことはない。自分たちが作らなければ、けっして存在しなかったレンズを、マスに届くプロダクトとして具現化する。そこにタムロンのプライドがある。とりわけXGMのような新技術を導入するときには、設計、生産技術、製造が一丸となって、必要とあらば設計を見直すこともいとわず、高いクオリティと安定した製造の両立を目指す。
高い精度が求められるXGMのコーティング
レンズの仕上げとなる、反射防止や表面保護のためのコーティングのプロセスでは、汚れ、傷、ゴミが大敵だ。特殊なXGMレンズでは、問題が生じた場合、コーティングを剥がして、再研磨、再コーティングすることができない。各プロセスで細心の注意を払い、未然に防止することが重要になる。静電気の除去、熟練を要するコーティング前の目視での検査など、現場の固い結束が、安定した製造につながっていく。
完成度を高め続ける独自技術
デジタルカメラが高画素化し続けている現在、レンズにも従来の常識を超えた性能が求められている。タムロンは、世界で初めて、大口径F/2.8超広角ズームレンズ15-30mm(A012)に独自開発の手ブレ補正機構(VC)を搭載、超広角レンズにも手ブレ補正が有効であることを実証した。レンズが大型化しないよう、XGMレンズを駆使しつつ、専用設計のVCユニットで小型化していくのは、ズームとVC、両方の技術を練り上げてきたタムロンならではの合せ技だ。
さらなる理想のレンズへの可能性
タムロンのXGMは、ガラスモールドによる55ミリを超える大口径の生産を可能にした、最先端の技術。このような画期的な技術が実現することによって、設計は可能でも製品化できなかったレンズを量産できるようになる。その証が、大口径超広角ズームレンズ15-30mm(A012)だ。夢を具現化することによって、加工技術が飛躍的に進歩し、さらなる理想のレンズへの可能性が開かれる。